講義名 経済開発論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水3
単位数 4

担当教員
氏名
陸 亦群

学習目標(到達目標) この講義は,発展途上国における経済開発の基本課題,開発問題の歴史的推移,経済開発の基礎的な理論および開発戦略についての基礎知識を習得し,開発経済学の考え方および開発問題の捉え方を理解し,経済開発諸問題に関する分析手法を身に付けることを目指したい。この講義を通じて,発展途上国の開発問題の起源と展開について,そして経済開発の諸理論について説明できるようになり,発展途上国が抱える様々な問題への対策を述べることができるようになる。
対応DP及びCP:2,3,4,5,8
授業概要(教育目的) 経済開発論は,発展途上国における開発問題を総合的に扱う学問である。経済開発問題の対象範囲は途上国の国内問題から外国との対外経済関係までと極めて幅広い。本講義では,歴史,理論,政策の3つの方位から発展途上国が抱える様々な問題の中から代表的なものをピックアップし,そうした問題はどのように発生し,どのように展開してきたのか,私たちはそれらの問題をどのように解釈すべきか,それらの問題を解決するにはいかなる方法があるのか,ということについて学び,体系的な知識を修得することを目的とする。
授業計画表
 
項目内容
第1回経済開発問題へのアプローチ(1)発展途上国とはいかなる諸国か,これをテーマにして発展途上国の定義を紹介する。 
【事前学習】2時間
テキスト第1章(第1節と第2節)を読んでおくこと。インターネットを活用し統計資料を参照して,世界の諸国の特徴を把握しておくこと。講義資料(第1講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,発展途上国の定義および授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第2回経済開発問題へのアプローチ(2)発展途上国とはいかなる諸国か,これをテーマにして,発展途上国をいかに捉えるべきか説明する。
【事前学習】2時間
テキスト第1章(第3節と第4節)を読んでおくこと。講義資料(第1講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容を復習し,講義資料に示されたポイントを確認した上で,発展途上国をどのように捉えるべきかを説明できるようにしておくこと。
第3回経済開発問題の歴史的推移―南北問題の発生とその展開多くの発展途上国は過去,植民地支配下にあった。植民地支配は現地経済にどのような影響を及ぼしたか,植民地独立のインパクトはどのようなものか,また1960年代に南北問題がいかにして展開したのかについて学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第2章(第1節の1と2)を読んでおくこと。講義資料(第2講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
本講義の内容をよく復習し,講義資料に示されたポイントを確認した上で,かつての植民地支配が現在の途上国経済に与えた影響そして途上国登場の本質的意義を説明できるようにしておくこと。
第4回経済開発問題の歴史的推移―第三世界の結束と南北問題の展開発展途上国の連帯は「国連開発の10年」の実施やUNCTADの設立につながった。この回では,1960年代と70年代に南北問題がいかにして展開したのかについて学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第2章(第1節の3と4)を読んでおくこと。講義資料(第2講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,1960年代と70年代における南北問題の展開を説明できるようにしておくこと。
第5回経済開発問題の歴史的推移―南北格差拡大と累積債務問題の深刻化南北問題は新興工業国が登場したことによって大きく変容を遂げることになった。また,東西冷戦の終結は経済発展に関する思想に大きな変化を及ぼすことになった。この回では,こうした開発問題の急展開について学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第2章(第2節)を読んでおくこと。講義資料(第2講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,1980年代の南北問題の変容と冷戦終結後の開発問題の急展開を説明できるようにしておくこと。
第6回経済開発問題の歴史的推移―グロ-バル化時代下の経済開発21世紀に入って市場化が進み,グローバリゼーションの進展とともに開発途上国経済の中で急速に頭角を現してきた諸国があった。それが新興国である。この回は,新興国とりわけBRICsの台頭のその可能性について学ぶ。   
【事前学習】2時間
テキスト第2章(第3節)を読んでおくこと。講義資料(第2講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,21世紀に入って以降の開発問題の展開ならびに新興国の台頭について説明できるようにしておくこと。
第7回経済開発の基本問題発展途上国の貧困問題,経済成長と貧困,不平等の諸問題にについて学ぶ。        
【事前学習】2時間
テキスト第3章(第1節と第2節)を読んでおくこと。講義資料(第3講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第8回開発問題への理論的アプローチ―初期の理論的枠組み初期開発モデルとしての経済発展段階説と線形段階論のハロッド=ドーマー・モデルについて学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第3章(第3節の1)を読んでおくこと。講義資料(第3講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第9回開発問題への理論的アプローチ―構造論的アプローチ構造論的アプローチである二重経済発展論(ルイス・モデル)そして国際従属学派の理論について学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第3章(第3節の2)を読んでおくこと。講義資料(第3講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第10回開発問題への理論的アプローチ―新自由主義アプローチ経済開発に関する新古典派のアップローチ,ソロー・モデル-外生的成長理論および新成長理論-内生的成長理論について学ぶ。         
【事前学習】2時間
テキスト第3章(第3節の3)を読んでおくこと。講義資料(第3講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第11回経済発展と貿易の役割―国際貿易の実態と経済発展に対する意義この回では先ず国際貿易に実態を把握し,そのうえ経済発展に対する国際貿易の意義について学び,国際貿易は経済成長のエンジンであるのは何故かを考える。
【事前学習】2時間
テキスト第4章(第1節と第2節)を読んでおくこと。講義資料(第4講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,「一次産品」,プ「レビッシュ=シンガー命題」,「輸出悲観論」などのキーワードを説明できるようにしておくこと。
第12回経済発展と貿易の役割―国際分業関係の深化と経済発展国際貿易理論は国家から産業,そして企業の視点へと進展していく。この回では,企業の海外進出は発展途上国にどのようなインパクトを与えたか,また国際分業関係の深化と途上国の経済発展との関連性について学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第4章(第3節と第4節)を読んでおくこと。講義資料(第4講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,「比較優位」,「消費の多様性」,「独占的競争」,「企業の異質性」などのキーワードを正しく理解し説明できるようにしておくこと。
第13回開発戦略の展開と新たなキャッチアッププロセス輸入代替から輸出志向への開発戦略の転換,雁行形態型経済発展,フラグメンテーション型分業の出現と新しい成長拠点の形成について学び,1990年代後半以降のポスト雁行形態のキャッチアップについて考える。
【事前学習】2時間
テキスト第5章(第1節と第2節)を読んでおくこと。講義資料(第5講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,企業生産活動のグローバル化,新しい成長拠点と新たなキャッチアッププロセスについて説明できるようにしておくこと。
第14回グローバル化時代下の市場と政府開発戦略の主要なアプローチと,政府から市場への開発戦略のパラダイムシフト,市場補完アプローチ,ダイナミックキャッチアップについて学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第5章(第3節)を読んでおくこと。講義資料(第5講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習した上で,授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第15回中間まとめ経済開発問題の歴史的推移,経済開発の基本的な課題や開発経済の理論的アプローチ,国際貿易の役割そして開発戦略の展開などについてまとめる。
【事前学習】2時間
テキスト第1章から第5章までの内容に目を通すこと。
【事後学習】2時間
講義全体の内容をよく復習し,教材を熟読した上で,これまで各回の授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第16回経済発展と人口問題(1)世界の人口規模とその趨勢,発展途上国における人口増加の特徴,人口急増の意味について学ぶ。    
【事前学習】2時間
テキスト第6章(第1節)を読んでおくこと。講義資料(第6講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,授業中に出てきた「従属人口負荷」,「人口ボーナス」,「人口オーナス」,「人口ピラミッド」などのキーワードを説明できるようにしておくこと。
第17回経済発展と人口問題(2)人口転換モデルおよび人口増加の経済開発に対する含意を把握し,人口政策のあるべき姿について学ぶ。 
【事前学習】2時間
テキスト第6章(第2節)を読んでおくこと。講義資料(第6講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,「人口転換」,「人口爆発」,「マルサスの罠」といったキーワードを説明できるようにしておくこと。
第18回経済発展と人口問題(3)農村・都市間人口移動,インフォーマルセクターの発生と都市・農村間労働移動モデルについて学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第6章(第3節)を読んでおくこと。講義資料(第6講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,「所得格差」,「都市期待所得」,「インフォーマルセクター」について説明できるようにしておくこと。
第19回経済発展と農村開発(1)農業の実態および農村における課題,そして農村政策はどのようなものかについて学ぶ。  
【事前学習】2時間
テキスト第7章を(第1節と第2節)読んでおくこと。講義資料(第7講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,講義資料に示されたポイントを押さえた上で,授業中に出てきたキーワードと農村の課題を説明できるようにしておくこと。
第20回経済発展と農村開発(2)農村における貧困の原因と農村開発の必要性,そして今後の農村開発政策の在り方について学ぶ。 
【事前学習】2時間
テキスト第10章を読んでおくこと。講義資料(第7講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,講義資料に示されたポイントを押さえた上で,農村政策の有り様について説明できるようにしておくこと。
第21回経済発展と都市化政策(1)都市化はいかなるスピードで進み,その結果として発展途上国の都市ではどのような課題が発生しているのか,都市化の実態そして都市化の原因はどこにあるのかについて学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第8章(第1節)を読んでおくこと。講義資料(第8講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,都市問題の発生および都市化の原因について説明できるようにしておくこと。
第22回経済発展と都市化政策(2)産業集積と内生的産業発展,新たな成長拠点の形成,都市化の経済と雇用吸収について学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第8章(第2節)を読んでおくこと。講義資料(第8講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,授業中に出てきたキーワードと都市化の経済と雇用吸収について説明できるようにしておくこと。
第23回経済発展と都市化政策(3)企業の立地選択と産業集積,都市化政策と企業誘致の問題,都市化の政策目標と課題についてについて学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第8章(第3節)を読んでおくこと。講義資料(第8講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,授業中に出てきたキーワードと経済活動グローバル化時代の都市化政策のあるべき姿について説明できるようにしておくこと。
第24回東アジアの経験(1)アジア諸国における国際貿易の拡大,東アジアの域内貿易の特徴と分業関係の深化について学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第9章(第1節)を読んでおくこと。講義資料(第9講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,アジア諸国における産業内分業の進展を説明できるようにしておくこと。
第25回東アジアの経験(2)生産工程間分業の定着とアジア経済のアジア化の特徴について学ぶ。 
【事前学習】2時間
テキスト第9章(第2節と第3節)を読んでおくこと。講義資料(第11講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,開発援助の経緯と日本のODAの特徴を説明できるようにしておくこと。
第26回東アジアの経験(3)1980年代以降のアジアNIEsの台頭は東アジアの奇跡と呼ばれている。研究者はその原動力を何であると考えたか。この回では,その理論的解釈について学び,新古典派と修正主義の解釈を比較する。
【事前学習】2時間
テキスト第9章(第4節)と講義資料(第9講)「東アジアの奇跡論争」の関連部分を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,東アジアの経験から何を見出すか,東アジアのさらなる貿易拡大に向けた課題は何かを説明できるようにしておくこと。
第27回経済発展と開発援助(1)開発援助とはいかなるものか,開発援助はなぜ行うのか,これまでの開発援助の実績と特徴について学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第10章(第1節)を読んでおくこと。講義資料(第10講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,政府開発援助の意味を理解し,世界の政府開発援助の実態について説明できるようにしておくこと。
第28回経済発展と開発援助(2)日本はかつて援助を受けていたが,ある時点を境に援助を供与する側に転換し,今や主要援助供与国となった。日本のODAの特徴と実績,そして日本のODAが抱えている問題点について学ぶ。
【事前学習】2時間
テキスト第10章(第2節)を読んでおくこと。講義資料(第10講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,日本のODAの特徴とその問題点を説明できるようにしておくこと。
第29回経済発展と開発援助(3)経済発展における開発援助の意義について学ぶ。 
【事前学習】2時間
テキスト第10章(第3節)を読んでおくこと。講義資料(第10講)を参照し,授業の流れを把握しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,開発援助の課題と開発目標について説明できるようにしておくこと。
第30回まとめ経済発展と人口問題や都市・農村問題,開発援助などについてまとめる。
【事前学習】2時間
テキスト第8章から第14章までの内容に目を通すこと。
【事後学習】2時間
講義全体の内容をよく復習し,教材を熟読した上で,これまで各回の授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
授業形式 授業形式は講義を基本とする。授業はテキスト(教科書)に基づいて要点をパワーポイントで示し,適宜板書を加えて行う。質問等のフィードバックは翌週の講義で行う。
また,補助教材としてビデオを適宜視聴する。講義資料は各自でEcoLinkからダウンロードすること。教室での資料配布はしない。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
50% 20% 0% 30% 0% 100%
評価の特記事項 定期試験(学年末試験期間中に行う筆記試験,参照可),レポート,授業への参画の3つの要素を総合的に勘案して評価を行う。
テキスト 陸亦群・前野高章・安田知絵・羽田翔『現代開発経済入門』文眞堂,2020年,2,300円(税別)
(ISBN:978-4-8309-5082-7)
参考文献 ・長谷川啓之編『経済政策の理論と現実』学文社
・大野健一・桜井宏二郞『東アジアの開発経済学』有斐閣アルマ
   
オフィスアワー(授業相談) ・オフィスアワーは講義開講期間中毎週水曜日11:30~12:30の間,研究室にて行う(8号館受付で所定の手続きをとること)。必ず事前にアポイントを取ること。
・質問は,短い休憩時間には十分な対応ができないため,定期的に行うリアクションペーパーやオフィスアワーを活用すること。

事前学習の内容など,学生へのメッセージ 地道な努力で学力を定着させることがポイントとなる。
必ず毎回の授業に出席すること。授業前にはテキストの該当部分の内容をよく読み,授業後にはノートを整理し講義内容を復習しておくこと。
4年生前期・後期各5回(計10回),3年生前期・後期各10回(計20回)の出席に満たさない場合は成績評価の対象外,すなわち「E」評価となる。