講義名 人口経済論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火3
単位数 4

担当教員
氏名
松倉 力也

学習目標(到達目標) 人口問題は多岐にわたっており、扱う変数は人が生まれてから死ぬ間に起こる、就学、就業、結婚、育児や退職などのライフイベントばかりでなく、何世代も通した資産の蓄積や価値観などもその研究対象になっている。本講義では、このような人口変数の特徴を身近な経済学的視点として捉え、以下のようなことを具体的な目標とする。
1.具体的にわが国や他の国の人口問題とは何かを説明できるようになる。
2.人口変数を経済学的視点でとらえることができるようになる。
3.人口問題に対する具体的な政策介入の可能性などを議論できるようになる。
対応DP及びCP;1,2,3,4,5,8.
授業概要(教育目的) 少子高齢化が進行しているわが国であるが、世界の他の国々でも出生率が低下し、死亡率が改善してきている。本講義では、わが国を含む先進国や開発途上国の人口変動と経済の関係を解説するとともに、結婚、出生、育児、死亡や家族形成などの人口学的行動を様々な経済学分析ツールを使用して紹介する。また、身近なデータや例を示しながら実証的な分析方法やその解説をする。
授業計画表
 
項目内容
第1回人口経済学とはコースの概要および人口研究の基本的アプローチを説明する。

【事前学習】2時間
 現在起っている人口問題について、新聞や雑誌等で調べること。

【事後学習】2時間
 講義で示した人口の新しい問題や過去の問題に関して、実際のデータについて調べ、講義で触れた人々の生活を変化させた(させている)事象について理解を深めておくこと


第2回世界人口の過去・現在・将来Ⅰ人類の誕生から、どのようにヒトの集落ができあがり、そしてヒトが移動していったかのか、食糧などの資源の面から考察する。

【事前学習】2時間
講義用に準備したプリント等を読んでおくこと。さらに、基礎的な統計的分析に関して予習しておくこと。

【事後学習】2時間
 人口の推移に関して、時代や地域によってその変化が異なるが、ある法則に基づいて動く傾向について、講義で示した国以外についても研究しておくこと。

第3回世界人口の過去・現在・将来Ⅱ人口増加率をコントロールする人間の試みと、 過去になかった現在の独自性を説明する。

【事前学習】2時間
 人口増加における簡易な推計をするので、基礎的な数学、特に対数や行列等の予習を行うこと。

【事後学習】2時間
 講義で示したポール・アーリックが示して「人口爆発」について調べておくこと。
第4回 世界人口の過去・現在・未来Ⅲ国連人口推計を用い、将来の世界人口のトレンドを紹介するとともに、将来推計法について説明する。

【事前学習】2時間
 前講義に続いて人口推計の簡易な方法を説明するので、基礎的な数学や、回帰分析程度の統計的手法を調べておくこと。

【事後学習】2時間
 抗議で示した推計方法を使用して、自分の周りや特定の国に対して、簡易な推計を自分で行うこと。さらに、その推計結果から、どのような社会に将来なるのか
考察すること。
 なお、講義の中で示した、ローマクラブの「成長の限界:には、システムダイナミックスというシミュレーション方法が使用されているが、興味ある学生については個別に対応する。
第5回人口と開発Ⅰ
第2次大戦後、世界の発展途上国に関して経済開発が促進されてきた。本講義では各年代におきて、開発とそのベースになった経済開発理論について説明する、

【事前学習】2時間
 マクロ経済学における生産関数や、経済成長の理論について学習しておくこと。

【事後学習】2時間
 講義で示した経済理論について、その時代背景と現在でもその理論が適用可能であるかを吟味すること。特に、現在の人口増加の趨勢とアフリカの問題や、人的資源と経済成長の関係について、先進国と発展途上国の側面から、検討すること。

第6回人口と開発Ⅱ2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)について、人口成長と経済成長の関係について説明する。

【事前学習】2時間
 マクロ経済学における経済成長の理論について学習しておくこと。特に、人的資源と経済成長について把握しておくこと。

【事後学習】2時間
 本講義で示した、MDGsに関して、最終報告書(http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/15009/)に利用して、何が達成されたか、そしてできなかったのかを学習しておくこと。

第7回人口と開発Ⅲ
2016年より新たに定められた持続可能な開発目標(SDGs)について説明する。特に、MDGsで有効とされた開発に関するプログラム評価などについても言及する。

【事前学習】2時間
2015年9月25日で採択されたアジェンダ(Transforming our world: the 2030 Agenda for SustainableDevelopment ;:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101401.pdf))を読んでおくこと。

【事後学習】2時間以上
SDGsが成可能であるかどうかについて、インド、中国以外の発展途上国の人口と成長の関係を分析すること。特にアフリカの国々について考察すること。また、自分たちの身の回りでSDGsに貢献できるか考え、その機会があれば実行して欲しい。
第8回人口転換理論I

人口転換理論と経済の発達段階(ステージ1)を説明する。

【事前学習】2時間
これまでの講義で説明してきた、人口の推移に関して、過去のプリント等を読んでおくこと。 さらに、経済開発と人口の構造について考察すること。

【事後学習】2時間
 普通死亡率(CBR)、普通出生率(CDR)の計算方法の復習と、中央人口の定義について、国勢調査データを調べておくこと。

第9回人口転換理論Ⅱ
人口転換理論と経済の発達段階(ステージ2)を説明する。

【事前学習】2時間

これまでの講義で説明してきた、人口の推移に関して、過去のプリント等を読んでおくこと。 さらに、経済開発と人口の構造について考察すること。

【事後学習】2時間
 死亡率が低下した要因について復習をすること。特に、現在の発展途上国で何が起きているのか、死亡率の低下速度についても実際のデータを分析し考察すること。

第10回人口転換理論 Ⅲ
人口転換理論と経済の発達段階(ステージ3)を説明する。

【事前学習】2時間
講義用に準備したプリント等を読んでおくこと。第8回~第9回の講義資料を読んでおくこと。

【事後学習】2時間
 出生率が低下した、11の近代仮説について、現在の発展途上国で適合するか実際のデータを分析し考察すること。
第11回人口転換理論 Ⅳ
人口転換理論に対する批判と第2の人口転換理論を説明する。

【事前学習】2時間
講義用に準備したプリント等を読んでおくこと。また、第8回~第10回の講義資料を読んでおくこと。

【事後学習】2時間
第8-11回の講義でとりあげた理論と適合しない事象について、宗教、都市化、経済発展などの側面からまとめておくこと。
第12回 マルサスの人口理論Ⅰ

マルサスの人口論とその問題点に関して食料問題を例に解説する。

【事前学習】2時間
講義用に準備したプリント等を読んでおくこと。また、産業革命期のイギリスの、経済と政治情勢について予習しておくこと。

【事後前学習】2時間
救貧法とマルサスの考え方についてまとめておくこと。食糧の生産と人口増加の関係について、ボズラップの理論と一緒にまとめておくこと。
第13回マルサスの人口理論Ⅱ
マルサスの人口論をベースに、環境と人口問題に焦点をあてて解説する。

【事前学習】2時間
人口増加と環境について、SDGsで講義した話を基に、どのような問題が現代におきているかをまとめておくこと。

【事後学習】2時間
現代で展開されるマルサスの理論が食糧の問題でだけでなく、環境の問題に当てはまることを理解し、どのように克服可能であるか、講義の議論をベースにまとめておくこと。特に、第3回の講義で示したSimonの理論をベースに まとめること。
第14回マルサスの人口理論Ⅲ
マルサスの人口論から、貧困問題についてその焦点を当てて解説する。

【事前学習】2時間
第12回~第13回の講義資料を読んでおくこと。特に、貧困に関して当時、マルサスや当時の首相のピットがどのように考えていたかをまとめておくこと。

【事後学習】2時間
貧困をなくすために、マルサスが考えをまとめておくこと。また、本講義で話した、比較優位説などマルサスには関係ない理論についてもまとめておくこと。
第15回中間のまとめ
第2回から第14回までに、説明した人口経済学の理論などについて、実際の応用例などを示し、最近起きている問題等について分析を行う。

【事前学習】2時間
第2回から第14回までの資料を読んでおくこと。

【事後学習】2時間
人口転換理論やマルサスの理論が現在にどのように関わったいるか、その考え方が現在のSDGsにどのように関わっているをまとめておくこと。
第16回出生の経済学ライベンシュタインの出生理論を解説する。

【事前学習】2時間
ミクロ経済学の基礎的な消費者行動の理論を復習しておくこと。

【事後学習】2時間
講義で示した、子供を持つ効用と費用について、図を用いてまとめておくこと。

第17回出生の経済学 Ⅱ

ライベンシュタインの出生理論を紹介し、わが国の実際のデータにより理論の検証をする。

【事前学習】2時間
第16回の講義プリント読んでおくこと。また、

【事前学習】2時間
ライベンシュタインの理論が、現代の日本に適合するところ、適合しないところをまとめておくこと。
第18回出生の経済学 Ⅲ

ベッカーの出生理論とnew home economicsを解説する。

【事前学習】2時間
ライベンシュタインの経済理論の先進国モデルを復習しておくこと。

【事後学習】2時間
講義で示した子ども数と子供の質とのトレードオフについてまとめておくこと。特に、先進国、発展途上国の違い以外にも、先進国における違いについてまとめおくこと。
第19回出生の経済学 Ⅳ
ベッカーの出生理論とnew home economicsを実際のデータを用いて検証する。

【事前学習】2時間
第16~18回の講義用に準備したプリント等を読んでおくこと。

【事後学習】2時間
講義で示したButz-Ward modelが経済の状況でどのように変化するかまとめ、さらにシカゴモデルに対する批判をまとめておくこと。
第20回結婚および出生の経済分析
結婚や出生分析に関する変数の説明や、日本における結婚や出生率低下に関する研究を解説する。

【事前学習】2時間
また、第16回~第19回の講義資料を読んでおくこと。

【事後学習】2時間
ベッカーの結婚に関するモデルが現在の日本に当てはまるか、または他の地域で適合するか、まとめておくこと。
第21回労働力と人的資本の関係

教育と生産性の関係について先進国における問題と開発途上国の問題を明らかにする。

【事前学習】2時間
生産関数などマクロ経済学の基本的な理論を予習しておくこと。

【事後学習】2時間
人口の構造変化が労働力に与える効果と教育が与える労働力の質の変化についてまとめておくこと。さらに、現在の日本などに起きている高齢化の影響がどのように経済成長に影響するかについて、講義でし示した3つの人口配当について、その発生メカニズムについて理解を深めること。
第22回死亡Ⅰ平均寿命など、死亡率の指標の意味とそのトレンドについて具体的な数値を示し、死亡率の変化がもつ意味を理解できるようにする。

【事前学習】2時間
これまで講義用に準備したプリント等を読んでおくこと。

【事後学習】2時間
講義で示した。様々な死亡率の計算について、エクセルなどを使用して自分で計算をしておくこと。特に標準化の方法は死亡率の計算以外に様ざなな応用ができるのでよく理解しておくこと。
第23回死亡Ⅱ
日本における死亡率改善や医療費などの関係について、数値を示し、具体的な政策介入の可能性をさぐることを検討する。

【事前学習】2時間
財務省がホームページ上で示している社会保障の財政見通しについて読んでおくこと。

【事後学習】2時間
講義で示した、わが国おける死亡率の今後の予想と高齢者の健康度をまとめるともに、現在の政府が示す将来的な財政見通しの問題点についてまとめておくこと。

第24回世代の経済学Ⅰ
人口の年齢構造変化と世代間の扶養システム(社会保障など)や、ライサイクル仮説などについて解説する。

【事前学習】2時間
以下のページからPopulation Aging and the Generational Economy: A Global Perspectiveをダウンロードし、第一章の. “Population aging and the generational economy: key findings”を熟読しておくこと。
https://www.idrc.ca/en/book/population-aging-and-generational-economy-global-perspective?PublicationID=987

【事後学習】2時間
講義でしめした新しい世代の経済活動を計測する国民移転勘定に関して、その指標の意味を理解しておくこと。なお、さらに詳しい内容については事前学習でダウンロードした書籍の第3章“Introducing age into national accounts”を参照すること。
第25回世代の経済学Ⅱ
世代間扶養について国民移転勘定(NTA)の概念について説明する。

【事前学習】2時間
第24回の講義で示した書籍の第3章から5章を読んでおくこと。

【事前学習】2時間
本講義で示したNTAの指標について復習を行うこと、各指標の詳細な説明は、ダウンロードした書籍の第5章から9章にしるしてあり、各自で参照しながら理解すること。

第26回 世代の経済学Ⅲ
国民移転勘定(NTA)を用いて日本における世代間および世代内の扶養のシステム(公的移転・私的移転など)の変化を概観する。

第26回世代の経済学Ⅲ
国民移転勘定(NTA)を用いて日本における世代間および世代内の扶養のシステム(公的移転・私的移転など)の変化を概観する。


【事前学習】2時間
第24回の講義で示した書籍の第27章“The elderly as latent assets in aging Japan”を読んでおくこと。

【事後学習】2時間
講義で示した点を踏まえ、同書籍における第28章から第32章を参照して、他の国々の字状況についてまとめておくこと。
第27回世代の経済学Ⅳ
国民移転勘定 (NTA)を用いて、世界の他の国の世代間および世代内の扶養のシステム(公的移転・私的移転など)の変化を概観する。

【事前学習】2時間
第24回~26回の講義資料を読んでおくこと。

【事後学習】2時間
国民移転勘定(NTA)を用いた経済と人口の関係を示した人口配当について各国の教協を国民移転勘定(NTA)ホームページ(http://www.ntaccounts.org/web/nta/show/)からデータ等をダウンロードしてまとめておくこと。
第28回わが国の人口1(戦後から現在)
戦後から現在のわが国の人口の変化を紹介しながら、日本の経済・社会に人口がどのような影響を与えたかについて具体的に示し、これまでの政策(特に出生促進政策など)等の実行性についても吟味する。

【事前学習】2時間
第2次世界大戦後から現在までの日本の経済成長についてGDPデータ等を参照しておくこと。GDPの変化の要因等や歴史的な事象についても参照しておくこと。

【事後学習】2時間
わが国において人口と経済成長に大きく寄与している出生率の低下について、その原因が時代とともに変化していることを、人口動態統計などのデータソースから分析しておくこと。
第29回わが国の人口2(将来) 将来のわが国の人口推計を紹介しながら、今後の問題を検討。人口変数と経済変数との因果関係を具体的に示し、政策的な介入の可能性について明らかにする。

【事前学習】2時間
政府が予想している人口の将来像とその推計方法について下記のページよりダウンロードして参照しておくこと。
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp

【事後学習】2時間
本講義で示した新しい人口推計方法を使用した場合に政府の推計とどれくらい異なるかを理解し、その影響が実際にどのように起こるか、社会保障の議論だけではなく、個人の生活レベルで起る影響についてもまとめること。
第30回まとめと応用例についてこれまでの講義で説明したことの理解度を図るため確認試験をおこない、第人口経済学の理論などについて、実際の応用例などを示し、最近起きている問題等について分析を紹介し理解を深める。

【事前学習】2時間
こらまでの講義資料や自分でまとめた資料を読んでおくこと、また、講義を始めた最初の時と比較して、あらたん気が付いた問題とその解決方法をまとめておくこと。
【事後前学習】2時間
将来起こりうる人口がもたらす問題について、本コースで学んだことを用いて、自分でデータを収集し分析をすること。
授業形式 通常は講義形式で行うが、受講者人数によってはグループディスカッションやエッセイなどを書いてもらう予定である。
質問や授業内での提出物等のフィードバックは,翌週の講義で行う。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
60% 0% 0% 0% 40% 100%
評価の特記事項 定期試験の結果が大きなウェイトを占めているので、授業で習ったことをしっかり身につけて、試験に臨んでください。授業時に行うエッセイ課題なども加味する。
テキスト 特になし。
参考文献 特になし。
オフィスアワー(授業相談) 毎週 金曜日 午後14時~午後16時
事前にアポイントをとること。連絡方法としては初回の講義に示すメールアカウントに連絡すること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 人口経済学はマクロ・ミクロ経済学の両方の観点から分析します。それらの基礎が十分であることが重要ですが、人口問題に関心があり、自分で経済や社会問題を考えたいという学生を歓迎します。