講義名 公共経済学 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 金3
単位数 4

担当教員
氏名
川出 真清

学習目標(到達目標) 本講義は,公共部門の経済学である公共経済学の基本概念とその理論について,主体的な学びの中で理解を深め,市場活動において公共部門を活用するための方法を考えられることを目標とする。市場メカニズムの限界とその解決策の中で,公的部門の存在意義とその限界を理解しながら,公的部門の現実的な活用方法を検討できるようになる。特に,政府介入がもたらす様々な副作用を理解し,政府介入の費用と便益を考えながら,実際に課題解決のための基本的な規範的考察ができるようになる。

対応DP及びCP: 1,2,3,4,5,8
授業概要(教育目的) 本講義は,ミクロ・マクロ経済学の枠組を基盤として,公共部門の役割に関する基本概念を解説する講義と参加者間の議論,受講者自身による考察で構成される。具体的には,各トピックの課題について受講者各自が事前に考察した上で,その理論的枠組みについて教員が解説する。その上で,その方策の有用性と限界を授業内で議論する。授業後の振り返りの中で,各トピックについて受講者が内省的に理解を深める。受講者が公共経済学に関する各概念の理論構造と実社会との関連性を理解し,単純化が困難な現実課題について,規範的枠組みを尊重した実際的解決策を自ら提案できる能力を養う。
授業計画表
 
項目内容
第1回公共経済学を学ぶことについて本講義の特徴や授業への参加方法について概説しつつ,実際に議論などを行う。本講義が目指す公共経済学の学修のあり方を解説と考察する。
【事前学習】学習とは違う学修とは何かを考えてくる;2時間
【事後学習】講義資料を読み,自分にとっての学修について考えをまとめる;2時間
第2回公共経済学の概要1:公共部門の意味について公共経済学が主題とする公共部門の役割や課題について考察する。
【事前学習】公共部門がどういうものかを調べ,考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,公共部門の意義や課題について考えをまとめる;2時間
第3回公共経済学の概要2:公共部門と市場活動の関係について公共部門が対話する市場活動と両者の違いについて考察する。
【事前学習】市場活動がどういうものかを調べ,考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,市場活動への公共部門の関わりについて考えをまとめる;2時間
第4回公共経済学の概要3:ミクロ・マクロ経済学との関係について入門科目として学んできたミクロ経済学やマクロ経済学の中で,公共経済学がどのように位置づけられるかについて考察する。
【事前学習】ミクロ・マクロ経済学の意義について調べ,考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,公共経済学とミクロ・マクロ経済学の関係について考えをまとめる;2時間
第5回市場の失敗と公共部門:市場の失敗とはなにかミクロ経済学などでも学ぶ市場の失敗とはなにかについて,公共経済学としての位置づけを考察する。
【事前学習】講義資料を読み,公共経済学における市場の失敗について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,公共経済学における市場の失敗について考えをまとめる;2時間
第6回公共財と最適供給1:サミュエルソン・ルール公共財の意味とその供給の望ましい水準について,規範的帰結に至る理由を考察する。
【事前学習】講義資料を読み,公共財の性質と最適供給を阻む特性について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,公共財の最適供給の意味について考えをまとめる;2時間
第7回公共財と最適供給2:リンダール・メカニズム最適な公共財供給を実現するリンダール・メカニズムの必要性,その意義,限界を考察する。
【事前学習】講義資料を読み,リンダール・メカニズムを活用する理由について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,リンダール・メカニズムについて考えをまとめる;2時間
第8回公共財と最適供給3:クラーク・メカニズムリンダール・メカニズムに代わるクラーク・メカニズムの必要性,その意義,限界を考察する。
【事前学習】講義資料を読み,クラーク・メカニズムを活用する理由について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,クラーク・メカニズムについて考えをまとめる;2時間
第9回公共財と最適供給4:クラブ財と全体のまとめクラブ財がもたらす効果を考察し,公共財供給が抱える課題について考察する。
【事前学習】第6講から第8講までの講義資料を読み,公共財供給における課題について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,公共財供給について考えをまとめる;2時間
第10回ゲスト講義(予定:時期が変更される可能性があります)財政に関する各方面の実務者の方々から,財政の課題について講義いただく。継続的な問題から,現在注目を浴びている話題に至るまで,広範な内容を説明いただき,質疑応答を通じて,規範的考察の可能性と限界を考察する。
【事前学習】財政に関する新聞記事などを読み,トピックについて考察する;2時間
【事後学習】配布資料を読み,実務での財政課題について考えをまとめる;2時間
第11回外部性とその対処1:外部性と内部化理想的な交換経済が前提しない外部性とその解決策としての内部化について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,外部性の意味について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,外部性とその内部化について考えをまとめる;2時間
第12回外部性とその対処2:ピグー税外部性が存在する場合の一つの解決策であるピグー税について,その意義,限界を考察する。
【事前学習】講義資料を読み,ピグー税の独創性とは何かについて考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,ピグー税について考えをまとめる;2時間
第13回外部性とその対処3:コース定理外部性が存在する場合のもう一つの解決策であるコース定理について,その意義,限界を考察する。
【事前学習】講義資料を読み,コース定理の独創性とは何かについて考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,コース定理について考えをまとめる;2時間
第14回外部性とその対処4:全体のまとめ外部性が存在する場合の解決策の課題解決方法の特徴や課題について考察する。
【事前学習】第11講から第13講までの講義資料を読み,外部性解決の課題について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,外部性解決のメカニズムについて考えをまとめる;2時間
第15回前半講義のまとめ前期の講義を全体的に概観し,各トピックに通底する公共経済学の取り組み方について考察し,公共経済学における学修とは何かについて考察する。
【事前学習】第1講から第14講までの講義資料を見直し,公共経済学の学修について考察する;2時間
【事後学習】各自が考える公共経済学の学修について考察する;2時間
第16回前期講義を踏まえた後期講義について前期講義の全体像を振返りつつ,後期で主題となる課税や政府介入とはの意義と課題について考察する。
【事前学習】これまでの講義を思い出し,課税や政府介入に共通する効果について考察する;2時間
【事後学習】課税や政府介入について考えをまとめる;2時間
第17回資金調達の課題1:労働所得課税1財政活動のもう一つの軸である資金調達としての課税について,労働所得税の概要と基本的課題を考察する。
【事前学習】講義資料を読み,労働所得課税の意味について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,労働所得課税について考えをまとめる;2時間
第18回資金調達の課題2: 労働所得課税2労働所得税における一括税と比例税の違いがもたらす超過負担の差異を踏まえ,労働所得税の持つ問題点について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,労働所得税の超過負担について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,労働所得課税の費用と便益について考えをまとめる;2時間
第19回資金調達の課題3:資本所得課税資本所得税と法人税の概要と基本的な課題と,超過負担の問題点について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,資本所得課税の意味について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,資本所得課税の費用と便益について考えをまとめる;2時間
第20回資金調達の課題4:消費課税1間接税である消費税の概要と課税の負担関係を表す転嫁・帰着について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,消費課税の意味について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,消費課税の転嫁・帰着について考えをまとめる;2時間
第21回資金調達の課題5:消費課税2消費税において生じる超過負担とその変化について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,消費税における超過負担の意味について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,消費税の超過負担について考えをまとめる;2時間
第22回資金調達の課題6:税制改革のあり方とまとめ理論上の望ましい税制と実際の税制との相違を通じて,両者の違いの原因,今後の方向性と課題について考察する。
【事前学習】第16講から第21講までの講義資料を読み,税制の課題について考察する;2時間
【事後学習】税制の将来展望について考えをまとめる;2時間
第23回政府介入の費用と便益1:公共選択1財政民主主義において必要な手続きである投票について,その便益と課題について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,投票の課題について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,投票について考えをまとめる;2時間
第24回政府介入の費用と便益2:公共選択2社会的活動に必要な組織や議会という存在の便益と課題について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,党組織や官僚制,議会手続きの課題について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,組織や手続きについて考えをまとめる;2時間
第25回政府介入の費用と便益3:財政政策と公債の世代間負担財政政策の過程で生じる公債についての肯定的及び否定的な考え方や,財政破綻の条件について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,財政政策と公債の関係について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,財政政策と公債について考えをまとめる;2時間
第26回政府介入の費用と便益4:補助金政府介入の重要な役割の一つである補助金がもたらす費用と便益について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,補助金と超過負担について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,補助金の課題について考えをまとめる;2時間
第27回政府介入の費用と便益5:公的規制政府介入の重要な役割の一つである公的規制がもたらす費用と便益について考察する。
【事前学習】講義資料を読み,公的規制と超過負担について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,公的規制の課題について考えをまとめる;2時間
第28回政府介入の費用と便益6:社会保障生活に直接関わる政府介入である社会保障が果たす役割と,公的扶助の効果と課題を考察する。
【事前学習】講義資料を読み,生活保護の問題点について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,生活保護の課題について考えをまとめる;2時間
第29回政府介入の費用と便益7:地方自治と地方分権中央集権から地方分権へと移行することの意義を,規範的な視点から考察する。
【事前学習】講義資料を読み,地方財政の便益について考察する;2時間
【事後学習】講義資料を読み,地方財政の課題について考えをまとめる;2時間
第30回後半講義のまとめ後期の講義を全体的に概観し,各トピックに通底する公共経済学の取り組み方について考察し,公共経済学における学修とは何かについて考察する。
【事前学習】第16講から第29講までの講義資料を見直し,公共経済学の学修について考察する;2時間
【事後学習】各自が考える公共経済学の学修について考察する;2時間
授業形式 授業は教員による講義と受講者間の議論で構成される。講義前の事前考察を踏まえ,講義で理論的解説を行い,振り返りを通じてその理解を深める。議論や課題に関してのフィードバックは原則として授業中に行う。なお,ゲスト講義に関しては,講義の先生のご都合により時期や回数が変更される可能性がある。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
0% 50% 30% 20% 0% 100%
評価の特記事項 レポートは授業時間以外の事前考察や振り返りを対象とする。小テストは単元終了時に,EcoLinkでテストを行う予定である。授業への参加度は,授業時間中の発言や授業への意見を対象とする。
テキスト テキストは指定しない。EcoLinkで解説資料を配布し,事前学習や振り返りおよびテスをを行う。
参考文献 井堀利宏(2013)「財政学(第4版)」,新世社,2300円(税別).
上村敏之(2007)「コンパクト 財政学」,新世社.
ジョセフ・スティグリッツ(2003)「公共経済学 上・下(第2版・藪下史郎翻訳)」,東洋経済新報社.
井堀利宏(2009)「日本の財政・税制(3訂版)」,税務経理協会.
土居丈朗(2002)「入門公共経済学」,日本評論社.
オフィスアワー(授業相談) 火曜日5限(16:20~17:50)で,希望者は電子メールで事前に予約すること。場所は学生面談室または研究室とする。電子メールアドレスは講義初回に伝える。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 本年度から,主体的で対話的な学修を実践すべく,授業内容を変更しています。基本的には,事前学習と事後学習,出席による議論など,主体的な発見的学修が必要となります。昨年度までの講義主体の授業と大きく変更されるので注意してください。本科目を通じて,「理論というものは非現実的だ」と安易に投げ出すことなく,理論の意義の不明瞭さの中にある理論と規範の有用性,重要性,そしてその限界が見極められる人材になってほしいと思います。
授業用URL https://sites.google.com/site/kawademasumi/jp/course/upe/