講義名 都市環境論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水5
単位数 4

担当教員
氏名
川西 崇行

学習目標(到達目標) みなさんにとっておそらく最も身近な「環境」であろう都市空間の観(み)方、考え方について、さまざまな方法論を紹介して皆さん自身の五感をフルに使って「環境」を考えるよう誘導(ナビゲート)する講義を企図しています(都市環境の問題の諸位相を考えるのが重要なのであって、一命題に対して厳密な回答を求めるような講義とはしません。講義で提供した話題やものの観方を教養として自分で活かすことを希望します)。
特に、いわゆる経済学領域で見逃されがちな人間の「価値観」「合理性」などの問題、捨象されがちな「財貨換算の困難な価値」の問題について考察し、巨視的・立体的な思考法を習得することを目的とします。

授業概要(教育目的) ちなみに,本講義で扱う環境とは、都市問題の一位相である物質的な環境の悪化・環境問題―「公害」などに限定しません。
都市の生成・成長・成熟・衰退という歴史的な側面や都市の開発にまつわる諸問題、景観や実際に体感できる都市空間そのものの特性について広く扱い、物理・化学的環境のみではなく、文化的環境・歴史的環境に視野を拡張することを主旨とします。

受講者には日本・世界の地理・歴史、芸術・文化など幅広い興味を持って(高等学校迄で学んだ教養を総動員して)講義に臨んでくれることを期待し、前提とします。
(なお、都市観察の具体的な事例として、大学のある東京の市街をとりあげることが多いと思われます)
授業計画表
 
項目内容
第1回(1)ガイダンスと序論
「環境」「都市」という二つの概念について、あるいは「環境問題」について、アウトラインを説明し、受講者の意見を徴します。

※以下、諸単元(講義内容)は、概ね2回を1セットとして運用します(特に後期の検討・考察)。
※以下の授業内容は、シラバス関係規則に基づいて記載していますが、実際の授業進捗や受講者の関心に沿って内容を変更することがあります。
※休講等のあった場合、講義内容を併合して授業進捗を調整する場合があります。
第2回(2)環境論の様々な地平・自然環境
●自然環境問題
環境という場合、まず念頭に上がるであろう「自然環境」について、その環境問題の歴史的由来や現状について、簡単に解説します。
※ガイダンスで扱った「環境」の概念拡張を反映させながら授業を行います。
第3回(2)環境論の様々な地平・自然環境
●公害等に関する言説の整理
前回講義に引き続き、環境問題を広く意識させる契機となった「公害」について、公害の諸形態と問題の構造について整理します。
※ガイダンスで扱った「環境」の概念拡張を反映させながら授業を行います。
第4回(3)環境論の様々な地平・複合領域
●「農業」
農業は、都市と自然の遷移する重要な環境を形成し、かつ産業としてのみならず、環境保全の面からも大きな意味を持っています。我が国の農業政策と法制度に照らして、農業と環境について説明します。
※ガイダンスで扱った「環境」の概念拡張を反映させながら授業を行います。
第5回(3)環境論の様々な地平・複合領域

●「観光」
観光地は、風光明媚な景勝地であったり史跡であったりすることが多く、環境保全が重要な意味をもちます。しかし、産業としての観光が、地域社会・環境観に如何なる変容を起こすか等について解説します。
※ガイダンスで扱った「環境」の概念拡張を反映させながら授業を行います。
第6回(3)環境論の様々な地平・複合領域
●「地域振興」
前回までの総括として、農業・観光含め国土開発の全貌の中に位置づけて、国策としての「環境」対策と、特に戦後・高度成長から90年代までの動向を解説しす。
第7回(4)環境論の拡張
●「自然環境」「都市環境」「歴史的環境」
-都市・地域の歴史的環境-
ガイダンスや各回講義での皆さんの反応に沿いながら、さまざまな環境論の総括を試みます。
(内容詳細は講義でディスカッション等を通じて解説したいと思います)
第8回(5)都市・環境保全の様々な位相(1)


●自然公園・文化財・ナショナルトラスト
広義(広い意味での)の環境論に即して、都市の環境保全や(都市を含みながら)歴史的環境の保全について法・制度的な解説を行います。
第9回(6)都市・環境保全の様々な位相(2)
●都市公園・風致/景観地区など
前回に引き続き、広義(広い意味での)の環境論に即して、都市の環境保全や(都市を含みながら)歴史的環境の保全について法・制度的な解説を行います
第10回(7)都市の「環境」
●都市建設の歴史と環境
都市環境の特異性はどこに起因するのかを考えるため、都市という「場」の特殊性と、その歴史的な形成過程について、日本のみならず、欧州の諸都市などを実例を挙げながら解説します。
第11回(8)都市の「環境」
●我が国の都市
我が国の都市の特徴について。
都市形成の特徴、形態的特徴について、特に近世・近代の各種の都市について、風土や環境的特徴を解説します。
第12回(9)都市の「環境」

●巨大開発の実態とジャーナリズム
(前回までをうけて)
現代の都市環境形成-各種の建設行為や巨大開発行為について解説し、さまざまな報道や世論を手掛かりに、それらがナニモノであるのかをさまざまに検討します。
第13回(10)事例研究 都心の歴史的環境(1)
●地域の個性について
身近な事例として、東京の諸地域を事例としながら、都市内の諸地域の「個性」について、観察・考察し、具体的な「都市環境」について、検討します。
特に事例として東京の旧市街地・都心部の歴史的変遷をとり上げる予定です。
第14回(11)事例研究 都心の歴史的環境(2)●地域の個性について(続)
身近な事例として、東京やその他諸都市を事例としながら、都市内の諸地域の「個性」について、観察・考察し、具体的な「都市環境」について検討します。
第15回(12)事例研究 歴史的環境保全の最前線(1)
都市内の諸地域の、巨大開発・再開発によって、周辺(ないし広域)が大きな環境変容を受ける場合に起きた、社会的な反応等について実例を挙げ解説します。
※この内容は、後期での演習的な内容、都市の環境についての自説を考察するヒントとします。
第16回(13)事例研究 歴史的環境保全の最前線(2)


(承前)
都市内の諸地域の、巨大開発・再開発によって、周辺(ないし広域)が大きな環境変容を受ける場合に起きた、社会的な反応等について実例を挙げ解説します。
※特に、開発行為によって、都市地域の骨格・構成や風致が大きく変容する事例を取り上げます。
第17回(14)事例研究 身近な環境問題を考える手立て●都市環境の考え方
「環境概念の拡張」をベースに踏まえながら、都市環境の、自然環境保全とは異なる点、観察・考察を要する点について詳述します。
第18回(14)事例研究 身近な環境問題を考える手立て●都市環境の分析・把握方法について
(承前)
「環境概念の拡張」をベースに踏まえながら、都市環境の、自然環境保全とは異なる点、観察・考察を要する点について詳述します。
特に、都市内の小地域の質的観察、参与観察、歴史的調査について考えます。
第19回(14)事例研究 身近な環境問題を考える手立て●都市環境の質的分析手法(その1)
(承前)
都市の構成・都市内の環境を、個々人が具体的に分析する手法として、いくつかの都市分析の方法論を紹介します
※以降、使用する資料冊子を配布する予定
第20回(14)事例研究 身近な環境問題を考える手立て●都市環境の質的分析手法(その2)
(承前)
都市の構成・都市内の環境を、個々人が具体的に分析する手法として、いくつかの都市分析の方法論を紹介します。
(ディスカッションを予定)
第21回(14)事例研究 身近な環境問題を考える手立て●都市環境の質的分析手法(その3)
(承前)
都市の構成・都市内の環境を、個々人が具体的に分析する手法として、いくつかの都市分析の方法論・論考を紹介します。
第22回(14)事例研究 身近な環境問題を考える手立て●演習
ここまでに紹介した、都市環境を観察する手法に基づいて、実際に任意の都市の環境について授業内で、簡単な分析・検討を行います。
(前半:作業/後半:評価・解説)
第23回(15)事例研究※以下、「事例研究」の講義回に関しては、時事的な内容を含みますので、ここに記したものを対象としない場合があります。
※またここに至る事業進捗によっては、環境観察・分析についての解説・補足を行います。
(その場合、事例研究の内容を順延)
●事例研究(1)
都市部における「風致」の保存事例
第24回(15)事例研究※以下「事例研究」の講義回に関しては、上記のとおり逐次変更を行う場合があります。
●事例研究(2)
都市部における景観(美観)ならびに歴史的建造物のの保存事例(その1)
第25回(15)事例研究※以下「事例研究」の講義回に関しては、上記のとおり逐次変更を行う場合があります。
●事例研究(3)
都市部における景観(美観)ならびに歴史的建造物のの保存事例(その2)
第26回(15)事例研究※以下「事例研究」の講義回に関しては、上記のとおり逐次変更を行う場合があります。
事例研究(4)
景勝地の保全について(和歌浦・鞆など)
第27回(16)総括 環境とさまざまな価値観・倫理(1)
※以下「総括」の講義回に関しては、上記「事例研究」の順延で講義内容を併合する場合があります。

「都市環境の質的分析手法」と「事例研究」を手掛かりに、都市の空間・景観・環境の「ありうべき姿」の模索、「市民的合意形成」「開発行為の外部不経済性」の問題、「地価・開発事業の便益にのみ従属した従来型の都市建設のあり方」の超克について、総合的な検討を行います。
第28回(16)総括 環境とさまざまな価値観・倫理(2)
※以下「総括」の講義回に関しては、上記「事例研究」の順延で講義内容を併合する場合があります。

(続)「都市環境の質的分析手法」と「事例研究」を手掛かりに、都市の空間・景観・環境の「ありうべき姿」の模索、「市民的合意形成」「開発行為の外部不経済性」の問題、「地価・開発事業の便益にのみ従属した従来型の都市建設のあり方」の超克について、総合的な検討を行います。
第29回(16)総括 環境とさまざまな価値観・倫理(3)
※以下「総括」の講義回に関しては、上記「事例研究」の順延で講義内容を併合する場合があります。

(承前)上記に加えて、都市空間の変容を時間軸側から検討し、ストック/負のストック、都市のゲノム(自己生成性)について発展的に検討します。

第30回(16)総括
※以下「総括」の講義回に関しては、上記「事例研究」の順延で講義内容を併合する場合があります。

講義内容の総合的な確認・総括と質疑。
特に期末課題に関する質疑。
授業形式 講義形式。
視聴覚教材を活用しつつ、必要に応じて、小テスト的・アンケート的なもの(平常点)、ディスカッションも行います。
※上記は授業の各回と完全に対応するものではない。内容の目安である。
※授業の進行,授業内の課題によって判明した受講生の関心のありかなどによっては内容の前後や,ある特定のテーマについて特に深化して講述する場合がある。
(その他)
◯課題・レポートは学術的な論文の初歩ですから、地の文と引用の混同、「コピペ」は厳禁。
◯不明の点は、初回ガイダンスないし随時講師に質問してください。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
60% 0% 0% 30% 10% 100%
評価の特記事項 (1)授業中に行う簡易な感想文など
(2)夏季休暇中の課題(レポート形式)等を「平常点」とし
(3)年度末に課す課題(レポート形式)と併せ総合的に評価します。
(概ね平常点等40:期末課題60)
テキスト 適宜、印刷物等を配付します。
(☆本年度は、刊行が間に合えば、教科書に準じる位置付けの図書を別途指示する場合があります)
※必要な資料・参考図書は適宜配付または指示します。
参考文献 片桐新自(編)『歴史的環境の社会学』新曜社 2000年.
西村幸夫『都市保全計画』東京大学出版会 2004年.
竹内佐和子編『都市デザイン』(日本の産業システム8) 
NTT出版 2003年.
など。
オフィスアワー(授業相談) 授業後の教員室ないし当該の教室
※リクエストがあれば、適宜対応します。
※教場で希望があれば、火曜日午後なども対応します(教員室)。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ (1)歴史・地理の知識を駆使して授業を行いますから、必須要件として履修前に『必ず』高校迄の世界・日本の地理・歴史の基本(教科書の大項目レベル)を確実に復習して下さい。年度当初に基礎知識テストを行う場合があります。
数回づつ、各テーマが扱う内容の予・復習を、上記のように高校教科書レベルの参考図書に当たって、テーマの背景となる状況を理解するよう努めてください。
(2)自分にとって真に身近な「環境」に関心を強く持ち、また様々な言説に対しても自ら積極的に「考える」「検討・評価する」態度を持って下さい。
(3)授業の秩序を著しく乱す行為以外は特に禁止しませんが、常識的態度を以て臨んでください。