講義名 制度派経済学　≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日･時限 月３
単位数 4

担当教員
氏名
石田　教子

学習目標(到達目標) 1）19世紀から20世紀にいたる制度派経済学の学説史とその政治的・歴史的・社会的背景を理解できる。
2）制度派経済学者が過去に直面した問題が，現代社会が抱える問題につうじる側面をもっていることを実感することができる。
3）制度派経済学は決して一つの理論系譜の直線的な発展なのではなく，時代や論者によってさまざまな展開を見せてきたことを知り，それらの諸理論および諸思想を公平に比較ないし評価することができる。
対応DP及びCP：2，3，4，5，8
授業概要(教育目的) 制度派経済学は法，習慣，本能，企業組織などを経済学理論に組み込もうとする野心的分野で，市場経済の行き詰まりを打破する考えの一つとして近年再評価されています。前期は，大衆消費社会の到来をいち早く見抜いたT. ヴェブレン，景気循環を最初に科学的に分析したW. C. ミッチェル，法や倫理を学際的に取り入れようとしたJ. R. コモンズの理論を解説します。後期は，戦後世代の代表J. K. ガルブレイス，低開発国と先進国の関係を主題としたG. ミュルダール，環境の問題を初めて経済学に組み込んだW. カップの経済思想を解説します。
授業計画表
 
回項目内容
第1回ガイダンス
制度派経済学とは		制度派経済学がどのような分野の経済理論なのかについて概説し，今後の授業の進め方，成績評価の方針について説明します。

【事前学習】2時間
授業用ウェブサイトなどを参考に「制度派経済学」について調べてみよう。
【事後学習】2時間
20世紀転換期のアメリカに関する配付資料を読み、課題シートを完成させて次回提出すること。
第2回映像資料鑑賞（1）
アメリカにおけるビック・ビジネスの形成		映像資料を見て，20世紀初頭のアメリカの歴史を振り返ります。とくに当時のアメリカで生まれたビック・ビジネス（巨大企業）の成り立ちを見ていきます。

【事前学習】2時間
歴史あるアメリカの企業を調べてみよう。
【事後学習】2時間
映像資料を見た感想をまとめておくこと。
第3回T. ヴェブレン（前編）
ぜいたくな消費の意味		他人の目を気にして，他人に見せびらかすために消費するというヴェブレンの消費論の特徴を紹介し，通常の消費論との違いを説明します。

【事前学習】2時間
「有閑階級」とはどのような階級なのか調べてみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第4回T. ヴェブレン（後半）
ビジネスの論理と産業の精神		ヴェブレンの『有閑階級の理論』は消費者サイドの議論でしたが，そのような世界において企業がどのように行動するのかを説明します。

【事前学習】2時間
「ものづくり」という言葉からイメージするものを列挙してみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第5回映像資料鑑賞（2）
消費行動とヴェブレン効果		映像資料を見て，ヴェブレン効果といわれるものが私たちの身近な消費活動においても当てはまるかどうかを考えてみます。

【事前学習】2時間
「顕示的消費」や「ヴェブレン効果」とは何か調べてみよう。
【事後学習】2時間
映像資料鑑賞時のノートをもとに感想シートを完成させ，次回提出すること。
第6回グループ・ディスカッション A第6回に鑑賞した映像資料を主題として，ヴェブレン効果を含む消費のインターパーソナル・イフェクトが私たちの身近な消費活動においても当てはまるかどうかについてグループ・ディスカッションを行います。

【事前学習】2時間
映像資料を見た感想をまとめておくこと。
【事後学習】2時間
グループ討論後の振り返りシートをまとめて次回提出すること。
第7回W. C. ミッチェル（前編）
進化論的経済学と数量経済学の統合		ヴェブレンの教え子であったミッチェルは，師の進化論的経済学と当時台頭し始めた数量経済学を統合しようと考えましたが，その意図を考えていきます。

【事前学習】2時間
ヴェブレンの進化論的経済学を復習しておこう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第8回W. C. ミッチェル（後編）
科学的な景気循環論の創始		ミッチェルは，景気の変動や循環に関する最初の科学的分析を行ったといわれています。ここでは，彼の景気循環論のエッセンスを説明します。

【事前学習】2時間
ミッチェルが創設に寄与した「全米経済研究所」とはどのような機関か調べてみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第9回映像資料鑑賞（3）
第一次世界大戦		映像資料を見て，19世紀末から20世紀の第一次世界大戦までのアメリカや世界の様子を理解し，制度派経済学の時代的背景を捉えます。

【事前学習】2時間
第一次世界大戦前後で世界がどのように変わったか調べてみよう。
【事後学習】2時間
映像資料鑑賞時のノートをもとに感想シートを完成させ，次回提出すること。
第10回グループ・ディスカッション B第9回に鑑賞した映像資料を主題として，制度派経済学という一つの学派が形成され，展開されていった時代にどのような特徴が見られるか，ディスカッションを行います。

【事前学習】2時間
映像資料を見た感想をまとめておくこと。
【事後学習】2時間
グループ討論後の振り返りシートをまとめて次回提出すること。
第11回J. R. コモンズ（前編）
理論的道具としての「取引」概念		コモンズは社会を分析するにあたって，独自の「取引」概念を構築しました。この取引概念から彼の制度経済学がどのようなものかを考えていきます。

【事前学習】2時間
経済における「取引」にはどのようなものがあるかを列挙してみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第12回J. R. コモンズ（後編）
集団・組織の分析と適正な資本主義		コモンズが分析した集団や組織は，資本主義におけるゴーイング・コンサーンというものでした。そこから彼が考えた「適正な」資本主義への道を考察します。

【事前学習】2時間
「ゴーイング・コンサーン」とは何か調べてみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第13回旧制度派経済学の経済思想ヴェブレン，コモンズ，ミッチェルの経済思想を復習します。

【事前学習】2時間
これまでに扱った経済思想の内容を一通り振り返ってみよう。
【事後学習】2時間
3人の経済学者の類似点や相違点を書き出してみよう。
第14回全体の解説と確認試験前期の講義を通して学んだことの理解を確認します。

【事前学習】2時間
これまでに説明した制度派経済学のポイントを整理しておこう。
【事後学習】2時間
授業中に出てきたすべてのキーワードを説明できるようにしておくこと。
第15回フィードバック前期の確認試験について解説し，結果をフィードバックします。

【事前学習】2時間
これまでに配付した資料や自分で作ったノートを参考に、全体を復習しておこう。
【事後学習】2時間
答えられなかった問題について復習しよう。
第16回リベラリズムと経済学方法論制度派経済学はアメリカにおけるリベラル派の思想系譜の一つです。リベラリズムのアメリカにおける意味について確認しながら、制度派経済学の経済学方法論の特色について説明します。

【事前学習】2時間
「リベラリズム」とは何か調べてみよう。
【事後学習】2時間
授業で学んだ思想家たちの自由に関する考え方をリスト化してみよう。
第17回J. K. ガルブレイス（前編）
ゆたかな社会の諸問題		見かけはゆたかになったとはいえ，20世紀後半の社会は，広告による需要の喚起など，消費者の欲望が生産者に依存する問題が顕著となりました。これらの問題を初めて指摘したガルブレイスの経済思想を解説します。

【事前学習】2時間
「依存効果」とはどのような意味の用語か調べてみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第18回J. K. ガルブレイス（後編）
産業国家から公共国家へ		ガルブレイスは新たな産業国家に期待しましたが，晩年はそれを管理する公共的機構の必要性を説きました。ここでは，そのような機構の役割を見ていきます。

【事前学習】2時間
「テクノストラクチュア」とは何か調べてみよう。
【事後学習】2時間
企業の目的は本当に「利潤の最大化」なのか，身近な企業のウェブサイトなどを調査し，自分の考えを書き出してみよう。
第19回映像資料鑑賞（4）
冷戦		映像資料を見て，第二次世界大戦後の冷戦時代がどのような時代なのかを理解します。

【事前学習】2時間
「冷戦」とはどのような時期だったのか調べておこう。
【事後学習】2時間
映像資料鑑賞時のノートをもとに感想シートを完成させ，次回提出すること。
第20回G. ミュルダール（前編）
ケインズ経済学以前のケインズ政策		1920年代，北欧のスウェーデンのミュルダールはケインズ的な政策的提言をすでに行っていました。この回ではミュルダールの少子化対策などを見ていきます。

【事前学習】2時間
北欧の経済政策と聞いて浮かぶことはどんなことだろう。自分なりに調べて列挙してこよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第21回G. ミュルダール（後編）
福祉国家から福祉世界へ		ミュルダールの福祉世界という考え方は，従来の福祉国家論を超えた理想的ヴィジョンです。今日の開発経済学の理論的ベースとなる内容を理解します。

【事前学習】2時間
一般に言われる「福祉国家」とはどのような国のあり方を指すのか調べてみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第22回映像資料鑑賞（5）
あなたの服の本当のコストを知っていますか？		映像資料を見て，20世紀後半において，先進国と途上国の経済がどのように関わり合っているか，私たちが普段購入する商品が作られる背後でどのような問題が生じているのかについて知識を深めます。

【事前学習】2時間
「南北問題」とは何か調べてみよう。
【事後学習】2時間
映像資料の感想をまとめ、次週提出します。
第23回グループ・ディスカッション C第22回に鑑賞した映像資料を主題としてディスカッションします。G. ミュルダールのいう「福祉世界」にいたるために，私たちがこれまでにしてきたこと／これからできることはどのようなことでしょうか。

【事前学習】2時間
映像資料を見た感想をまとめておくこと。
【事後学習】2時間
グループ討論後の振り返りシートをまとめて次回提出すること。
第24回W. カップ（前編）
環境破壊と社会的費用		1937年にナチスを逃れてアメリカに亡命したW. カップは，アメリカ経済が華やかに発展していく一方で，人々の暮らす環境が日に日に損傷していくさまを目の当たりにしました。彼の時代の課題，すなわちこうした経 済成長の負の側面を取り扱う経済学の樹立という問題について確認します。

【事前学習】2時間
「社会的費用」とは何か調べてみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第25回W. カップ（後半）
成長の限界と持続可能な発展		W. カップの結論は現代経済学にはヒューマニズムの精神が足りないという悲観的なものでした。それでは，カップは制度派経済学の立場から，持続可能な経済発展のためのどのような処方箋を提示しようとしたのでしょうか。

【事前学習】2時間
1972年に発表された「成長の限界」という報告がどのような問題を提起する報告であったか調べてみよう。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し，授業中に出てきたキーワードなどを説明できるようにしておくこと。
第26回映像資料鑑賞（6）
我々は将来に対する倫理の問題にどのように対峙すべきか？		映像資料を見て，経済成長と環境保全という二つの目標を同時に達成することの困難および重要性について考察します。

【事前学習】2時間
クリントン政権下で副大統領を務めたアメリカの政治家アル・ゴアのノーベル平和賞受賞の理由について調べよう。また，193の国連加盟国が2015年に掲げた17の持続可能な開発目標はどのようなものだったでしょうか。リスト化しておこう。
【事後学習】2時間
映像資料の感想をまとめ、次週提出すること。
第27回グループ・ディスカッション D第26回に鑑賞した映像資料を主題としてディスカッションします。経済活動が世界全体に及ぼす正負の影響とはどんなものか。低開発国と先進国はどのような軋轢に苦しんでいるか。持続可能な開発目標を達成するために，私たちがこれまでにしてきたこと／これからできることはどのようなことでしょうか。

【事前学習】2時間
映像資料を見た感想をまとめておくこと。
【事後学習】2時間
グループ討論後の振り返りシートをまとめて次回提出すること。
第28回新制度派経済学の経済思想ガルブレイス，ミュルダール，カップの経済思想を復習します。

【事前学習】2時間
これまでに扱った経済思想の内容を一通り振り返ってみよう。
【事後学習】2時間
3人の経済学者の類似点や相違点を書き出してみよう。
第29回全体の解説と確認試験後期の講義を通して学んだことの理解を確認します。

【事前学習】2時間
これまでに説明した制度派経済学のポイントを整理しておこう。
【事後学習】2時間
授業中に出てきたすべてのキーワードを説明できるようにしておくこと。
第30回フィードバック後期の確認試験について解説し，結果をフィードバックします。

【事前学習】2時間
これまでに配付した資料や自分で作ったノートを参考に、全体を復習しておこう。
【事後学習】2時間
答えられなかった問題について復習しよう。
授業形式 講義，映像資料鑑賞，グループディスカッション，授業内のレポート課題への取り組み
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度 		その他 合計
30% 20% 30% 20% 0% 100%
評価の特記事項 「定期試験」学年末，「小テスト」は前期末に行います。「レポート」は授業内課題，「参画度」はグループディスカッションの評価です。
テキスト テキストは特に使用しません。毎回レジュメ等を配付します。
参考文献 高哲男著『現代アメリカ経済思想の起源：プラグマティズムと制度経済学』名古屋大学出版会，2004年。
ベルナール・シャバンス著，宇仁宏幸，中原隆幸，斉藤日出治訳『入門 制度経済学』ナカニシア出版，2007年。
オフィスアワー(授業相談) 水曜4限。その週の月曜までに必ずアポイントを取ること。
事前学習の内容など，学生へのメッセージ 説明は板書の他，スライドを用いて行いますので重要論点はしっかりと書き取ること。積極的に講義に参加 する受講生を望みます。理由のない遅刻，授業中の私語および途中退出は講義に出席する意思がないものと見なします。グループディスカッションに参加するためには，対象となる映像を鑑賞しなければなりません。