講義名 経済特殊講義Ⅰ(地域再生の経済論) ≪◇学部≫
講義開講時期 前期
曜日・時限 水4
単位数 2

担当教員
氏名
行友 弥

学習目標(到達目標) 1,身近な地域社会に関心を持ち具体的な次元で経済事象を認識できる。
2,「グローバル」「ローカル」の両面から経済を複眼的に把握できる。
3,社会構造の変化と経済の動きとの相互関係を総合的に理解できる。
4,農林水産業など地場産業の歴史・現状・課題を考えることができる。
5,政策の変遷を知り、歴史的文脈において現在を捉えることができる。
6,持続可能な社会の在り方を考え能動的な経済主体として行動できる。

対応DP及びCP:1,2,3,5,8
授業概要(教育目的) 人口減少=少子高齢化、グローバル化、貧困・社会的孤立など現代の日本社会が抱える諸課題を経済の動きと関連付けながら取り上げます。一つの事例として大規模災害の現場、特に福島第一原発事故の被災地の現状を紹介し「復興(地域の再生)とは何か」を考えていきます。
原発立地やエネルギー政策の変遷など戦後経済史の中で地域社会、地域の産業、消費生活などの変化をたどり、それを踏まえて現在のさまざまな課題を捉え直し、解決の展望を探ります。
また、ローカルな問題は地球環境問題などグローバルなテーマともつながっていることを明らかにし、国連が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)の視点から地域の経済事象を論じます。
授業計画表
 
項目内容
第1回総論自己紹介と講義全体の概要説明。経済と地域の関係、グローバリゼーション、人口減少社会、社会関係資本などの基礎的な概念を解説。
第2回災害と復興・防災東日本大震災・福島第一原発事故を中心に、災害が地域に与えるダメージとその回復はどのようにもたらされるかを考察。「復興」とは何か、いわゆる「ソフト防災」や「事前復興」の考え方にも言及。
第3回エネルギーと地域原発事故からさかのぼり、エネルギー政策と地域経済の関係について歴史的に考察。脱・化石燃料と再生可能エネルギーの開発を通じた「里山資本主義」の考え方と実例も紹介。
第4回少子高齢化と地域少子高齢化とその帰結としての人口減少が地域の社会と経済にどのような影響をもたらすかを考察。いわゆる限界集落や地方消滅の実態を示し、国や自治体の取り組みを概観。
第5回老いていく都市人口減少と高齢化の都市部への影響を考察。いわゆる都市のスポンジ化や空き地・空き家(負動産)の増大、都市型限界集落などの問題について、その現状と国・自治体による対策を紹介。
第6回経済発展と地域社会東京一極集中の源流を高度経済成長期までさかのぼり、過疎・過密、公害問題など「成長の病」に政治はどう対処しようとしたのか、「国土の均衡ある発展」は成功したのか――などを考察。
第7回食と農林水産業経済成長の陰で衰退を続けてきた日本の農林水産業と農山漁村。その縮小過程と現状を確認する。食料安全保障と農林水産業の多面的機能の概念も紹介し、その非経済的価値をどのように維持・再生していくかを考える。
第8回消費のかたち流通システムの巨大化・複雑化で生産と消費の現場は遠のき、そこにさまざまなリスクとゆがみが生じている。「コンビニ」や「ネット通販」の問題を通じ、望ましい消費市場の在り方を再考する。
第9回地方経済の苦悩グローバル化を背景に工場の海外移転や商店街の空洞化に悩まされるローカル経済。主軸のサービス産業は人口減少を背景に人手不足が深刻化し、中小零細企業の事業承継も課題になっている。その動向と解決策を探る。
第10回地域おこしの挑戦「地方消滅」の危機感が高まる中、埋もれた地域資源の掘り起こしやコミュニティビジネスの起業、関係人口の獲得など新たな地域おこしの挑戦が各地で始まっている。さまざまな実例を紹介しながら、その可能性を検討。
第11回市街地再生の試み人口減少を背景に模索が続けられる「コンパクトシティー&ネットワーク」(街の集約と連携)について実例を挙げつつ考察。危機に瀕する公共交通や医療機関の再編・再生についても問題点を整理し、解決の方向を探る。
第12回地方自治と分権地域を支える最大の制度的インフラは「自治体」だが、人口減少はその基盤をも揺るがす。市町村合併、ふるさと納税、住民参加(市民との協働)、公益事業の民営化、公務員の非正規化などの動きについて功罪を考える。
第13回社会的孤立と包摂所得格差の拡大や地縁・血縁の希薄化がもたらす社会的孤立。ひきこもり、単身高齢者、ひとり親・子どもの貧困など課題は多様化。地域共生社会の構築による社会的包摂は可能か。「子ども食堂」など具体的取り組みも紹介。
第14回働き方と働き手非正規雇用の増大で流動性を高めてきた労働市場。正社員も過酷な勤務を強いられ、過労死や過労自殺が深刻化している。同一賃金・同一労働、働き方改革、ユニバーサル就労などの動きについて論じる。
第15回持続可能な社会再生可能エネルギーの導入など地域再生の営みは人類共通の課題解決にもつながる。国連の掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)を手掛かりに「グローカル」(global+local)な視点で地域と地球の未来を展望。
授業形式 一般的な講義形式ですが、質問や異論表明は随時受け付けます。結果として対話形式となることもありえます。出欠は取りませんが、出席者にはリアクションペーパーの提出を求めます(次回以降でも可)。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
0% 70% 0% 30% 0% 100%
評価の特記事項 リアクションペーパーの提出状況や、その内容によって授業への参画度を判断します。
テキスト ありません
参考文献 個別の授業において示します。
オフィスアワー(授業相談) 相談等はリアクションペーパーに記してください。メールでも受け付けます。面談を希望する方もメールでご連絡を。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 講義内容について(事前、事後を問わず)新聞、雑誌、書籍、ネットなどで知見を広め、自分なりに考えてほしいと思います。講師の見方や意見に賛同する必要はありません。異論や疑問があれば遠慮なくぶつけてください。さまざまな物の見方に接し、借り物ではない自分のオリジナルな意見を身に付けるよう心掛けてください。