講義名 経済特殊講義Ⅰ(マクロ経済政策の諸課題) ≪◇学部≫
講義開講時期 後期
曜日・時限 金4
単位数 2

担当教員
氏名
杉原 茂

学習目標(到達目標) 1. 日本が直面しているマクロ経済的諸課題を経済学的視点でとらえることができるようになる。
2. そうした諸課題を,単なる現象として理解するのではなく,背後にある経済的メカニズムを理解した上で,その原因と帰結,問題点を説明できるようになる。
3. そうした理解を踏まえて,政府の採るべき政策を経済学的に考察できるようになる。
対応DP及びCP:1,2,3,5,8
授業概要(教育目的) 本講義は,きちんとした経済学的枠組みを踏まえて,長期の経済成長,短期の景気変動(低成長),インフレ/デフレ等のマクロ経済的問題についての,原因と問題点,政策対応について考察する。取り上げるイシューとしては,人口動態の変化,過剰投資・動学的非効率,生産性上昇の停滞,家計や企業の期待の役割(過度の楽観/悲観),金融市場と金融政策の連関,政策目標の設定,開放経済下の経済政策など。授業終了時には,身近なマクロ経済政策について,経済学的に考察する態度が身に付くことを目標とする。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション講義の内容,講義の形式,評価方法,履修上の注意点について説明する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書の目次等を見返して,これまで学習したことや理解が不十分なところなどを確認する。
【事後学習】2時間 
今後の自分としての勉強の進め方を考える。
第2回経済成長とマクロ経済政策(1) 貯蓄と投資の役割経済成長論の基本的なモデルを解説するとともに,経済成長における貯蓄と投資の役割を考察する。さらに,動学的非効率の議論を紹介する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書でソロー・モデルにおける貯蓄の役割を確認する(例えば,Mankiw, chap.7)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,貯蓄や投資を促進する政策の有効性や問題点を整理してみる。
第3回経済成長とマクロ経済政策(2) 人口動態と経済成長日本が直面している人口動態の変化が経済成長にどのような影響を与えるかについて,基本モデルや内生的成長モデルも踏まえて解説する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書でソロー・モデルにおける人口成長率の役割を確認する(例えば,Mankiw, chap.7)。【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,人口動態の変化に対する政策の有効性や問題点を整理してみる。
第4回経済成長とマクロ経済政策(3) 生産性と経済成長生産性と経済成長の関係を成長会計を紹介しつつ説明し,生産性の停滞の要因と政策的対応を解説する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書で成長会計について確認する(例えば,Mankiw, chap.8)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,生産性を改善するための政策の有効性や問題点を整理してみる。
第5回価格の伸縮性とマクロ経済政策長期の価格が伸縮的な古典派経済学におけるマクロ経済政策を説明する。また,古典派的な経常収支の決定理論(ISバランス論)も紹介し,人口動態が変化する時の経常収支の考え方を解説する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書で長期の価格が伸縮的な古典派モデルを確認する(例えば,Mankiw, chaps.3&5)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,価格が伸縮的な場合のマクロ経済政策の役割の有無を整理してみる。
第6回価格の硬直性とマクロ経済政策(1)この回以降、短期の価格が伸縮的なケインズ経済学におけるマクロ経済政策を解説する。最初に,基本的なIS-LMモデルを説明する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書でIS-LMモデルを確認する(例えば,Mankiw, chap.10)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,賃金・価格が硬直的伸縮的な場合に財政・金融政策が生産に影響を与えるメカニズムを整理してみる。 
第7回価格の硬直性とマクロ経済政策(2)弾力性の役割投資や貨幣需要の利子率弾力性の役割を解説し,経済状況に応じた財政・金融政策の選択について説明する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書でIS-LMモデルを確認する(例えば,Mankiw, chap.10)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,弾力性に応じたマクロ経済政策のあり方について整理してみる。
第8回価格の硬直性とマクロ経済政策(3)金融市場と金融政策その1金融政策の実際について,金融市場や政策決定過程を踏まえて解説する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書で貨幣市場や金融システムの役割を確認する(例えば,Mankiw, chaps.4&19)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,金融政策が金融市場を通じて実施されるメカニズムを正確に理解する。
第9回価格の硬直性とマクロ経済政策(4)金融市場と金融政策その2ゼロ金利制約など金融政策の実施上の障害と,それに対する非伝統的金融政策の経験を紹介する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書等でIS-LMモデルを現実の不況などに適用したケース・スタディを見てみる(例えば,Mankiw, chap.11, section 3)。
【事後学習】2時間
 授業内容を良く復習し,さらに,非伝統的な金融政策のロジックと実際の効果について整理してみる。
第10回価格の硬直性とマクロ経済政策(5)金融市場と金融政策その3金融政策が金融市場の相互作用が顕著な事例として,金融緩和とバブル,政府債務の清算(liquidation)や金融抑圧,欧州政府債務問題などについて解説する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書等で政府債務の累積と利子率の歴史的事例を扱っている箇所に目を通す(例えば,Mankiw, chap.3, section 4, Case Study)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,バブルや政府債務問題などの歴史的事例を取り上げて,金融政策が果たした役割を検討してみる。
第11回価格の硬直性とマクロ経済政策(6)金融政策の目標経済成長とインフレとのトレード=オフに直面して,金融政策がどのように政策目標を設定するのかを説明する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書で短期フィリップス曲線を確認する(例えば,Mankiw, chap.13)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,現実の金融政策が最適な形で実施されているか考えてみる。
第12回価格の硬直性とマクロ経済政策(7)マクロ経済政策の適切性の基準ニューケインジアン・モデルのような経済主体の最適化行動を採り入れた理論を通じて,マクロ経済政策が経済全体の厚生水準を高めるという視点を解説する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書でニューケインジアン・モデルを見てみる(例えば,齋藤等,第8章)。
【事後学習】2時間 
授業内容を良く復習し,さらに,ミクロ経済学的な視点を導入することのメリットについて考えてみる。
第13回開放経済とマクロ経済政策開放経済におけるマクロ経済政策の効果をマンデル=フレミング・モデルによって解説する。
【事前学習】2時間 
マクロ経済学の教科書でIS-LMモデルを開放経済へ拡張した場合の財政・金融政策の効果を確認する(例えば,Mankiw, chap.12)。
【事後学習】2時間
 授業内容を良く復習し,さらに,開放経済において財政・金融政策が利子率や為替レート,生産に及ぼす影響がこの理論によって説明できる考えてみる。 
第14回信用秩序の維持とプルーデンシャル規制金融政策のもう一つの重要な目標である信用秩序の維持について,銀行の慎重な行動を要求するプルーデンシャル規制を中心にして解説する。
【事前学習】2時間 
公共経済学の教科書等でインセンティブ規制を扱っている箇所に目を通す(例えば,Tirole, chap.11)。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,さらに,金融政策を実施する上で、信用秩序の維持をどのように考慮に入れることが望ましいかについて考えてみる。
第15回確認試験と解説授業を通して学んだことの確認試験と解説を行う。
【事前学習】4時間
これまでの講義の要点を復習する。
授業形式 講義形式で行う。質問等のフィードバックは、翌週の講義で行う。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
60% 0% 40% 0% 0% 100%
評価の特記事項 定期試験60%, 授業内に実施する小テスト40%とする。
テキスト 特になし。
参考文献 Mankiw, Gregory. Macroeconomics, 10th ed.
Tirole, Jean. Economie du bien commun (Economics for the Common Good) .
齋藤誠・岩本康志・太田聰一・柴田章久,『新版 マクロ経済学』,有斐閣, 2016年, 4620円.
* 必ずしも最新のバージョンでなくて良い。邦訳あり。
オフィスアワー(授業相談) 火曜日15:00~16:00。事前に、授業後またはメールでアポイントメントをとること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 私語厳禁。
教科書や参考文献、講義などを基に、マクロ経済政策について自分なりの意見を形作り、それを論理的に説明できるようになるよう努めて下さい。また、日常的に、マクロ経済情勢やマクロ経済政策について問題意識を持って考えるようにして下さい。