講義名 法と経済学 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火2
単位数 4

担当教員
氏名
常木 淳

学習目標(到達目標) 法と経済学は、政府と国民との間の関係について、両者を媒介する法体系の視点に重点を置いて経済学的視点から考察する学問です。本講義によって、学生諸君は、政府と法が存在することの経済的な意味、国民が法的な規制に従わなくてはならない理由について、厳密な理解ができるようになります。市場だけでなく、法制度もまた、社会に「希少」に配分されている資源を配分しています。法は、立法と司法を通じて、どのように希少資源のより効率的な配分に資するのか、場合によっては資源配分効率を悪化させてしまうのか、学生諸君が論理的に厳密な理解ができるようになります。
DP,CP 2,3,4,5,8
授業概要(教育目的) そもそも国家とは何か、なぜ、アナーキーではなく国家が存在するのか、という社会科学の根本問題から説き起こして、国家主権と法の支配との相互関係、その経済的根拠について、資源、配分、効率性についての厳密な定義を踏まえて分析します。これらの基本考察を踏まえて、市場機構と政府による立法、司法を通じた政策介入との資源配分の特色の相違、二つの制度の役割分担のあり方について具体的なトピックごとに検討し、「国家」、「公共性」といった、しばしば曖昧に使用される概念の真に意味するところを、可能な限り正確に把握できるように講義を進めてゆきます。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション本講義の目標と講義の進め方について、基本的なガイダンスをします。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の「はじめに」と「第1章」を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第2回非協力ゲームの復習次回以降の講義に使用する非協力ゲームの基礎を復習します。これを政府による治安維持機能の意義の分析に応用します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第4章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第3回ホッブズのリヴァイアサントマス・ホッブズの古典「リヴァイアサン」の内容について説明し、その今日的な意義を公共経済学的な視点から解説します。
【事前学習】2時間
トマス・ホッブズと「リヴァイアサン」について、簡単に調べてきてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第4回司法の役割司法による国民の財産権保障と契約の履行強制との経済的意味を説明します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第18章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第5回国家主権と法の支配国家とその主権について厳密に定義し、法の支配との関係について説明します。
【事前学習】2時間
「法の支配」とは何を意味するのか、調べてきてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第6回立憲主義の経済効果憲法が国民の基本的な権利を保障することが、どのような経済効果を持つのか説明します。
【事前学習】2時間
国民に対する人権保障と、国の経済発展との関係について、考えてきてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第7回効率・公平・司法法は正義=公平の実現を目指すべきであるとする伝統的な法学者の見解と比較して、法は効率性を目標とすべきであるとする「法と経済学」の立場の正当化を試みます。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第17章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第8回コースの定理「法と経済学」の基本定理であるコースの定理について説明し、法政策への応用例を示します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第20,21章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第9回契約(1)契約の完備性について説明し、契約の補充、解釈手法、及び、関連するいくつかのトピックについて解説します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第22章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第10回契約(2)契約不履行とその法的救済手法の経済的効果について分析します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第23章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第11回契約(3)契約法のうちには、個人の選択の自由を規制するパターナリスティックな介入規定がありますが、それがどのような経済学上の意義と効果を持つか考察します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第24章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第12回所有権契約と並ぶ「法と経済学」の鍵概念である所有権について定義し、その経済学的な意義と効果とを考察します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第25章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第13回不法行為(1)-責任の分担不法行為の典型事例として交通事故を取り上げ、損害賠償による司法救済が具体的にどのように行われ、どのように効率性を改善するのかを説明します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第27章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第14回不法行為(2)―企業が加害者の場合原子力発電事故などの場合、加害者は個人ではなく企業になることがあります。このような場合に、効率性を改善するためにどのような損害賠償のシステムが望ましいかを検討します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第28章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第15回要約と質問前期の講義全体を振り返り、重要な論点を再確認します。適宜、質問に答えます。
【事前学習】2時間
前期の講義全体について、感想や質問を考えてきてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第16回後期のイントロダクション前期の講義内容を復習して、後期の講義内容である公法の特性を前期に扱った民法と対比して説明し、後期の講義の概要を示します。
【事前学習】2時間
前期の講義全体について復習し、そこで学んだ民法と、独占禁止法のような市場規制法との性格の違いについて考えてきてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第17回社会的厚生関数「法と経済学」において政府の目的を表現する社会的厚生関数について、その意味や機能につき詳しく説明します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第2章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第18回経済学と法学における価値理念の特性経済学の価値理念の帰結主義的性格に対して、対立する倫理学上の価値理念を説明し、法学における価値理念の特性を説明します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第3章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第19回憲法と法政策政府はいかなる基準に基づいて、どこまで個人の自由に対する法政策上の介入ができるかに係る憲法解釈学上の議論を、憲法に内在する自由主義と民主主義との対立に遡って説明します。
【事前学習】2時間
自由、平等、民主主義という諸理念は両立可能かどうか考えてきてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第20回公平な税体系課税は経済効率を悪化させますが、所得分配の公平性を担保するために必要になることを詳しく説明します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第9章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第21回厚生経済学の基本定理(1)以下の本講義で使用する完全競争市場経済のモデルと基本的な仮定について、詳しく解説します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第5章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第22回厚生経済学の基本定理(2)前回のモデルを使用して、パレート効率的な資源配分を導出し、その意味を説明します。また、社会主義的な経済計画は、なぜ効率的な資源配分に失敗するかを明らかにます。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第6章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第23回厚生経済学の基本定理(3)完全競争市場均衡によって実現される資源配分がパレート効率的であることを証明します。完全競争市場の前提条件を説明し、それが成立しない市場で何が生じているのか詳しく説明します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第7章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第24回余剰増加政策の意味市場競争による資源配分が効率的でない場合に、効率を改善するための余剰増加政策をどのように行うべきか、また、現実に効率改善のために政策がなぜ実現しにくいのか分析します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第8章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第25回独占と競争ミクロの教科書には、独占は良くないと書いてありますが、本当にそうでしょうか?そうだとすれば、どのような意味でどの程度悪いのか、基本から考え直します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第11章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第26回自然独占と規制完全競争市場が効率的な資源配分に失敗する典型例としての自然独占について説明し、資源配分を改善するための適正な価格規制政策のあり方について論じます。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第12章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第27回外部性(1)市場の失敗の典型例とされる外部経済について、ピグーによる課税政策と、コースによる司法的解決とを比較して説明し、両者のいずれが有効かを問題の状況ごとに検討します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第13章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第28回外部性(2)前回に引き続いて、外部性を解決するための公共政策として、損害賠償制度、ボーモル・オーツ税、排出権取引などを順次説明し、その効果と限界について検討します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第14章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第29回公共財公共財の概念を確立し、その効率的供給の条件を導出したサミュエルソンの論文の意義と問題点について検討します。フリーライダー問題を、合わせて説明します。
【事前学習】2時間
テキスト「法律家をめざす人のための経済学」の第26章を読んできてください。
【事後学習】2時間
授業の内容をノートにとって、内容の理解度を確認してください。
第30回まとめ確認試験を行います。
【事前学習】2時間
講義全体について、勉強してきてください。
【事後学習】2時間
試験の結果を振り返り、授業内容の理解度を確認してください。
授業形式 講義形式です。法と経済学の学術的な理論を現実的な政策問題とどのように結び付けて応用してゆくのか、というところに注意して講義を進めます。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
70% 15% 0% 15% 0% 100%
評価の特記事項 定期試験の結果が主な評価基準になりますが、提出されたレポートと出席実績を成績評価に際して考慮します。
テキスト 常木淳「法律家をめざす人のための経済学」、岩波書店、2015年、3,800円(税抜)
参考文献 授業中に適宜指示します。
オフィスアワー(授業相談) 時間については、授業時に指示します。事前にメールによるアポイントメントを取ること。メール。アドレスは、授業時に指示します。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 授業開始時に指示します。