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学習目標(到達目標) |
証拠に基づく政策決定の趣旨を理解し,実際に遂行できる能力を身に付けることができる。具体的には,以下のことを目標とする。
1. 行政組織における政策論議のあり方を知る。
2. 公共政策の立案・評価に必要な技法を習得する。
3. 公共政策の策定は,歴史や制度の制約の中で経済理論的に合理的な政策を如何に実現するかを追求するものであることを理解し,データや統計的手法をリーズナブルな形で複雑な現実に適応できる良識を形成する。
対応DP及びCP:2,3,4,5,8
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授業概要(教育目的) |
本講義は,近年公共政策の企画・立案において大きな焦点となっている「証拠に基づく政策決定」を実際に遂行するために必要な技法を実践的に解説する。まず,これまでの証拠に基づく政策決定の流れを概観し,行政組織における政策論議のあり方を学ぶ。次に,データ・統計技法の使い方や政策評価の方法について,背景にある考え方を直観的に説明するとともに,実際に適用する際の実践的ノウハウを解説する。授業終了時には,複雑な現実において経済理論的にもリーズナブルな政策立案をする能力を獲得することを目標とする。 |
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授業計画表 |
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回 | 項目 | 内容 |
第1回 | イントロダクション | 講義の内容,講義の形式,評価方法,履修上の注意点について説明する。
【事前学習】2時間
ミクロ経済学及びマクロ経済学の教科書の目次等を見返して,これまで学習したことや理解が不十分なところなどを確認する。
【事後学習】2時間
今後の自分としての勉強の進め方を考える。 | 第2回 | 証拠に基づく政策決定の流れ(1) | 政府におけるこれまでの証拠に基づく政策立案の経験,例えば,短期マクロ経済モデルとマクロ経済政策,多部門経済成長モデルと経済計画,費用・便益分析と交通インフラの整備などを紹介する。
【事前学習】2時間
内閣府のホームページなどで,過去の経済計画や短期マクロ経済モデルなどに関する資料を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,さらに,継続的に内閣府等のホームページをフォローする。 | 第3回 | 証拠に基づく政策決定の流れ(2) | 最近の動き,特に,よりミクロ的な統計分析に基づく政策決定について紹介する。
【事前学習】2時間
内閣府のホームページなどで,最近のEvidence-Based Policy Makingに関する資料を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,さらに,継続的に内閣府等のホームページをフォローする。 | 第4回 | 公共政策の企画のあり方:分析、説得、反証 | 行政組織における政策論議のあり方を学び,実務として政策立案をするための分析,説得・反証等の効果的な方法を身に付ける。
【事前学習】2時間
秋吉・伊藤・北山,第9章や森田,第8章を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,政策論議のあり方を良く理解する。 | 第5回 | 過去の経験から学ぶ:歴史研究・国際比較と文献サーベイの方法 | 自国及び他国の経験から学ぶ歴史研究や国際比較の方法に加え,既存の学術的な研究を包括的に評価する文献サーベイやメタ・アナリシスの方法を学ぶ。
【事前学習】2時間
丹後敏郎,『メタ・アナリシス入門』,第2章を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,文献調査の方法を身に付ける。 | 第6回 | データの使い方 | 記述統計的なデータを使って政策を立案・意思決定するための実際的な方法を学ぶ。
【事前学習】2時間
田中,第2章を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,さらに,宮原英夫・丹後敏郎編,『医学統計学ハンドブック』第2章「データの記述的解析」を読んでみる。 | 第7回 | 政策評価の方法(1) | 費用・便益分析の一般的なフレームワークと市場が存在しない場合の社会的便益の評価方法などの基本的な手法を理解する。
【事前学習】2時間
金本・蓮池・藤原,第1章を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,費用・便益分析の手法を身に付ける。 | 第8回 | 政策評価の方法(2) | 先進的な取り組みがなされている医療の費用・便益分析の具体例を通じて,実際に政策評価を行う際のノウハウを学ぶ。
【事前学習】2時間
Sloan, Frank, and Vhee-Ruey Hsieh. Health Economics, chap.15を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,政策の便益の評価方法を身に付ける。 | 第9回 | 政策効果の計測への導入 | 政策効果を統計的に正確に計測するためのアプローチについて、直観的な導入を与える。
【事前学習】2時間
田中,第2章を読む。
【事前学習】2時間
授業内容を良く復習し,因果関係を正確に計測することの重要性を理解する。
| 第10回 | 実験的アプローチ:政策実験・社会実験 | 無作為化比較試験は,因果関係の分析のベンチマークとなる手法であり,各種の統計技法を利用する際の参照基準となる。また,社会科学においては実験は困難であるが,近年では政策立案に当たってこうした実験的アプローチを採り入れようという動きもある。そうした基本的考え方を学ぶ。
【事前学習】2時間
計量経済学等の教科書で無作為化比較試験について記述している箇所を読んでみる(例えば,Angrist, Joshua, and Joern-Steffen Pischke. Mastering Metrics, chap. 1)。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,さらに,Angrist and Pischke, chap. 1に掲載されている分析例を丁寧に読み込む。 | 第11回 | 統計技法の使い方(1) | 線形回帰分析など比較的単純な分析を上手に使って,現実の問題点や解決策を探り当てていくノウハウを学ぶ。
【事前学習】2時間
田中,第5章及び第6章を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,さらに,田中,第5章及び第6章に掲載されている分析例を丁寧に読み込む。 | 第12回 | 統計技法の使い方(2) | 因果関係を厳格に検証する分析の実施方法と陥りやすい陥穽を理解する。この回は,伝統的な手法として、操作変数法とパネル・データ・モデルを紹介する。
【事前学習】2時間
田中,第8章及び第9章を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,さらに,田中,第8章及び第9章に掲載されている分析例を丁寧に読み込む。 | 第13回 | 統計技法の使い方(3) | 因果関係の分析について,比較的最近注目されている手法として,マッチング法や回帰不連続デザインなどについて解説する。さらに,欠測値やパネル・データにおける脱落の問題を検討する。
【事前学習】2時間
田中,第10章及び第11章を読む。
【事後学習】2時間
授業内容を良く復習し,さらに,田中,第10章及び第11章に掲載されている分析例を丁寧に読み込む。 | 第14回 | データの集め方 | 政策評価のためには時として独自のデータを収集する必要があるが,きちんとしたデータを集めるにはどうすれば良いか,サンプリング等調査の設計や実査の進め方を理解する。
【事前学習】2時間
松田芳郎・伴金美・美添泰人編,『ミクロ統計の集計解析と技法』,第1章を読む。 【事後学習】2時間 授業内容を良く復習し,統計調査の考え方や方法を身に付ける。 | 第15回 | 確認試験と解説 | 授業を通して学んだことの確認試験と解説を行う。
【事前学習】4時間
これまでの講義の要点を復習する。
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授業形式 |
講義形式で行う。質問等のフィードバックは、翌週の講義で行う。 |
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評価方法 |
定期試験
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レポート
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小テスト
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授業への
参画度
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その他
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合計
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60% |
0% |
40% |
0% |
0% |
100% |
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評価の特記事項 |
定期試験60%, 授業内に実施する小テスト40%とする。 |
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テキスト |
秋吉貴雄・伊藤修一郎・北山俊哉,『公共政策学の基礎 新版』,有斐閣,2015年,2860円.
田中隆一,『計量経済学の第一歩』,有斐閣,2015年,2,200円.
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参考文献 |
森田朗,『現代の行政』,第一法規, 2017年,2,200円.
丹後敏郎,『メタ・アナリシス入門』,朝倉書店, 2002年,5060円.
金本良嗣・蓮池勝人・藤原徹,『政策評価ミクロモデル』,東洋経済新報社, 2015年,4400円.
Sloan, Frank, and Vhee-Ruey Hsieh. Health Economics. MIT Press, 2012.
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オフィスアワー(授業相談) |
火曜日15:00~16:00。事前に、授業後またはメールでアポイントメントをとること。 |
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事前学習の内容など,学生へのメッセージ |
私語厳禁。
事前に教科書や参考文献に目を通して授業に臨むなど、高い学習意欲が求められます。
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参考URL 1 |
https://www5.cao.go.jp/98/e/keikaku/menu.html |
参考URL 2 |
https://www.cao.go.jp/others/kichou/ebpm/ebpm.html |
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