講義名 労働法 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 木3
単位数 4

担当教員
氏名
朴 孝淑

学習目標(到達目標) 本科目は,労働法の全体像の把握を目的とするものである。本科目では,受講生が,労働市場をめぐる法規律,個々の労働者と使用者との「個別的な労働関係」や労働者の集団(労働組合)と使用者との関係を規律する「集団的労使関係法」をめぐる法規律について学ぶことで,日本の雇用社会の現在と将来について考える機会を得ることができる。具体的には,労働基準法,労働契約法,労働組合法などの諸規定および判例法理を通じて労働を規律するルールの基本的枠組みを理解し,現代における複雑な労働問題について,法の原理原則から自分なりの解決策を考える力を鍛えることができる。
対応DP及びCP:1,2,5,8
授業概要(教育目的) 本講義は、現代日本における労働法の基礎的な知識を習得し、労働問題の法的な背景の理解を得ること、日本の雇用社会への法政策的な視点を得ることをねらいとする。

授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション:労働法とは
労働法の意義と歴史、労働法の必要性、労働法の体系などを検討し、労働法の全体像と基本的な考え方を正確に学ぶ。
【準備学習】テキスト第1章を読み、労働法の歴史および労働法の機能について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第2回労働関係の当事者(労働者・使用者)と基本的権利義務
労働法の当事者(労働者・使用者)の概念について検討し、どのような基準で労働者か否かを判断するかについて学ぶ。(ex. オペラ歌手は「労働者」?)
【準備学習】テキスト第2章および第1回の授業で配布したプリントを読み、労働法上の基本的な当事者となる労働者,労働組合,使用者の3つの概念を整理しておくこと。(学習時間2時間)
第3回労働条件の決定(1)就業規則による労働条件の決定の枠組みを重点的に取り上げる。―合意がないのに拘束される会社のルールとは?
【準備学習】テキスト第3章(34頁~39頁)および第2回の授業で配布したプリントを予め読み、労働法上の法源の骨格を順にみていくことによって,労働法の法的枠組みを整理しておくこと。(学習時間2時間)
第4回労働条件の決定(2)社員は、会社による労働条件(賃金等)の一方的な不利益変更(労働条件の引下げ)に従わなければならないのか。授業では、就業規則の変更による労働条件の変更について検討する。
【準備学習】テキスト第3章(39頁~44頁)および第3回の授業で配布したプリントを読み、労働条件の変更(特に不利益変更)について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第5回労働契約の成立(募集、採用内定、採用、試用)就業活動に取り組み、就職を希望した先から内々定を受け、内定を受け、入社する。このうちどの時点で労働契約は成立するのだろうか(いつ「社員」になるの?)。また、内々定や内定の取消しは法的に制限されているのだろうか。使用者には採用の自由がどこまで認められているのだろうか。(ex. 使用者は「美人」だけを採用してはダメなのであろうか。)
【準備学習】テキスト第4章および第4回の授業で配布したプリントを読み,雇用関係の成立に関する法を整理しておくこと。(学習時間2時間)
第6回人事(1)日本企業(特に大企業)の比較的多くが採用している人事制度には「職能資格制度」がある。授業では,職能資格制度を前提として,昇進・昇格・降格の意味を確認する。さらに,労働者の地位や資格が上下するときの法律問題,特に,降格において,使用者にその権限が認められる要件,そして,権利行使が濫用とされる要件等について学ぶ。
【準備学習】テキスト第5章(該当部分)および第5回の授業で配布したプリントを読み,雇用関係の展開(タテ方向の人事)に関する法を整理しておくこと。(学習時間2時間)
第7回人事(2)

社員は,会社の配転(転勤)命令に,どこまで従わなければならないのか。授業では,長期の契約関係を前提に使用者が労働者に対して有する人事権について,それがどのような制約を受け得るのかについて学ぶ。
【予習】テキスト第5章(該当部分)および第6回の配布資料を読み,雇用関係の展開(ヨコ方向の人事)に関する法を整理しておくこと。(学習時間2時間)
第8回賃金(1)賃金をめぐる法的問題のポイントは,(1)賃金はどのような根拠によって発生するのか,(2)有効に発生した賃金に対してどのような法規制がかけられているのかの2点である。本授業では,まず,賃金はどのような根拠によって発生するのかについて学ぶ。
【準備学習】テキスト第6章(80頁~88頁)および第7回の授業で配布したプリントを読み,賃金請求権に関する法を整理しておくこと。(学習時間2時間)
第9回賃金(2)前回の授業に引き続き,賃金をめぐる法的問題のなかで,有効に発生した賃金に対してどのような法規制がかけられているのかについて確認する。具体的には,賃金が発生する仕組みや最低限の保障、賃金の確実な支払を保障するための法制度について学ぶ。
【準備学習】テキスト第6章(89頁~96頁)および第8回の授業で配布したプリントを読み,賃金の法規制について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第10回労働時間・休憩・休日 労働時間制度の基本的な枠組みを検討し、日本の労働法は、労働時間について、どのような法規制を置いているのかを学ぶ。
【準備学習】テキスト第7章および第9回の授業で配布したプリントを読み,労働時間制度の特則について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第11回休暇・休業近年、「ワーク・ライフ・バランス」への関心が高まっている。日本においては、ワーク・ライフ・バランスを具体的に実現する法的な制度として、いかなる制度を設けているのかについて検討する。さらに、労働者はどのような場合に休暇や休業を取り、また休職することになるのか、そこでの法的問題は何かについて学ぶ。【準備学習】テキスト第8章および第10回の授業で配布したプリントを予め読み,休暇・休業制度について理解しておくこと。(学習時間2時間)
第12回差別禁止・均等・均衡取扱いの法ルール(1)差別は、人種、性別、思想・信条等を理由として生じる場合もあるほか、正規労働者と非正規労働者との間、高年齢労働者とそうでない者との間などでも生じ得る。授業では、2回にわたって労働者の人権をめぐる法規制について、近年の法律や裁判例の動きも含めてみていく。
【準備学習】テキスト第9章(130頁~140頁)および第11回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。(学習時間2時間)
第13回差別禁止・均等・均衡取扱いの法ルール(2)差別は、人種、性別、思想・信条等を理由として生じる場合もあるほか、正規労働者と非正規労働者との間、高年齢労働者とそうでない者との間などでも生じ得る。授業では、2回にわたって労働者の人権をめぐる法規制について、近年の法律や裁判例の動きも含めて、みていく。
【準備学習】テキスト第9章(141頁~146頁)および第12回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。(学習時間2時間)
第14回安全衛生・労働災害(1)職場環境は労働者の生命や健康をおびやかすことは少なくない。法は、労働者が健康で安全に働いていくためにどのような制度を設けているのだろうか。また、実際に労働者が仕事が原因でケガや病気になった場合、あるいは、死亡した場合、どのような法的な救済を求めていくことができるのだろうか。ここでは、このような問題を中心に学ぶ。
【準備学習】テキスト第10章および第13回の授業で配布したプリントを読み,労働者の安全や健康を確保するための法政策の状況について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第15回安全衛生・労働災害(2) 職場環境は労働者の生命や健康をおびやかすことは少なくない。法は、労働者が健康で安全に働いていくためにどのような制度を設けているのだろうか。また、実際に労働者が仕事が原因でケガや病気になった場合、あるいは、死亡した場合、どのような法的な救済を求めていくことができるのだろうか。ここでは、このような問題を中心に学ぶ。
【準備学習】テキスト第10章および第13回の授業で配布したプリントを読み,労働者の安全や健康を確保するための法政策の状況について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第16回イントロダクション&労働契約の終了(1):合意解約・辞職 雇用関係(労働契約)が終了する事由としては、大きく3つのタイプ(解雇、辞職、合意解約)のものがある。授業では、労働者がその一方的な意思表示によって労働契約を解約する「辞職」と、両当事者の合意によって労働契約が解約される「合意解約」について学ぶ。 【準備学習】テキスト第11章(該当部分)を予め読んでおくこと。(学習時間2時間)
第17回労働契約の終了(2):懲戒・解雇(整理解雇)授業では、雇用関係が終了する事由の一つとして、使用者がその一方的な意思表示によって労働契約を解約する「解雇」について学ぶ。また、使用者が経営不振などの経営上の理由により人員削減の手段として行われる解雇(整理解雇)についても検討する。 【準備学習】テキスト第11章(該当部分)および第16回授業で配布したプリントを読み,雇用関係の終了(労働契約の解約)に関する法を整理しておくこと。(学習時間2時間)
第18回労働契約の終了(3):退職・定年 現在の日本の法政策は、定年制の存在を前提としつつ、それを超えて高齢者の継続雇用を促していく方向で展開されている。授業では、高年齢者雇用安定法を中心に、日本の高齢社会における多様な雇用政策について学ぶ。 【準備学習】テキスト第11章(該当部分)および第17回授業で配布したプリントを読み,雇用関係の終了(辞職・合意解約,定年制)に関する法を整理しておくこと。(学習時間2時間)
第19回非典型雇用(1):有期労働契約 雇われて働く人々の中には、アルバイト、パート、派遣社員など、一般に、「非正規労働者」と呼ばれ、いわゆる正社員とは区別されて取り扱われている人々が存在する。授業では、これらの非正規労働者のうち、主に有期契約労働者をめぐる立法の内容および諸労働法的問題について学ぶ。 【準備学習】テキスト第12章(該当部分)および第18回授業で配布したプリントを読み,期間の定めのある労働契約をめぐる立法内容について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第20回非典型雇用(2):パートタイム労働 雇われて働く人々の中には、アルバイト、パート、派遣社員など、一般に、「非正規労働者」と呼ばれ、いわゆる正社員とは区別されて取り扱われている人々が存在する。授業では、これらの非正規労働者のうち、主にパートタイム労働者をめぐる様々な労働法的問題について学ぶ。 【準備学習】テキスト第12章(該当部分)および第19回授業で配布したプリントを読み,パートタイム労働者に関する法規制について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第21回非典型雇用(3):労働者派遣 雇われて働く人々の中には、アルバイト、パート、派遣社員など、一般に、「非正規労働者」と呼ばれ、いわゆる正社員とは区別されて取り扱われている人々が存在する。授業では、これらの非正規労働者のうち、主に派遣労働者をめぐる様々な労働法的問題について学ぶ。 【準備学習】テキスト第12章(該当部分)および第20回授業で配布したプリントを読み,労働者派遣に関する法規制について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第22回労働組合・不当労働行為第22回の授業からは、集団的労働関係法について学ぶ。今回の授業では、労使関係の基本的な枠組みを中心に検討する。具体的には日本の労働組合・労使関係の実態、労働組合の要件、労働組合の組織と運営に関する内容である。 【準備学習】テキスト第13章(該当部分)および第21回授業で配布したプリントを読み,労働関係の基本的枠組みについて整理しておくこと。(学習時間2時間)
第23回労働組合・不当労働行為労働組合法は、使用者の一定の行為を「不当労働行為」として禁止しているが、具体的にはどのような行為が禁止されているのであろうか。不当労働行為が行われた場合、労働者あるいは労働組合は、どのような救済を受けられるのであろうか。 【準備学習】テキスト第13章(該当部分)および第22回授業で配布したプリントを読み,不当労働行為の成立要件および不当労働行為の救済について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第24回団体交渉・労働協約・団体行動(1)—団体交渉労使関係法の基本目的は、労働条件が対等に決定される基盤を作るために「団体交渉」を中心とした労使自治を促すことにある。授業では、団体交渉を重点的に取り上げる。 【準備学習】テキスト第14章(該当部分)および第23回授業で配布したプリントを読み,団体交渉の法的枠組みについて整理しておくこと。(学習時間2時間)
第25回団体交渉・労働協約・団体行動(2)—労働協約授業では、主に「労働協約」を重点的に取り上げる。労働協約の機能について,「労働協約とは何か」という点に始まり,労働協約がどのような法的効力を持つのか,そして労働協約による労働条件の不利益変更は可能か,という点について学ぶ。【準備学習】テキスト第14章(該当部分)および第24回授業で配布したプリントを読み,労働協約の機能について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第26回団体交渉・労働協約・団体行動(3)—団体行動労働者には,どうしてストライキ権があるのか。憲法28条は,労働者に団結権,団体交渉権と並んで,団体行動権を保障している。ここでは「団体行動権保障」の法的枠組み,労働者の団体行動の中心にある争議行為を中心に,いかなる場合に団体行動の正当性が肯定され得るのかについて学ぶ。【準備学習】テキスト第14章(該当部分)および第25回授業で配布したプリントを読み,団体行動権保障の法的枠組みについて整理しておくこと。(学習時間2時間)
第27回日本の労働紛争処理システム(1)雇用関係法のもとで、労働者の権利はどのようにして実現されるのであろうか。授業では、主に日本の労働紛争解決システム(行政による紛争解決システム、裁判所による紛争解決システム等)について学ぶ。 【準備学習】テキスト第1章-5(個別紛争の解決)および第26回授業で配布したプリントを読み,日本の労働紛争の特徴について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第28回日本の労働紛争処理システム(2)第27回の授業に引き続き、日本の労働紛争解決システム(行政による紛争解決システム、裁判所による紛争解決システム等)について学ぶ。 【準備学習】テキスト第1章-5(個別紛争の解決)および第27回授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。(学習時間2時間)
第29回労働市場法:求職者と求人者との取引に関する法日本の労働市場(雇用)政策とその展開、また、労働市場法を労働法学はどのように捉えてきたのかを検討する。さらに、日本の長期雇用システムと雇用関係・労使関係・雇用政策について学ぶ。 【準備学習】第28回の授業で配布したプリントを読み,雇用政策法とは何か,また,雇用政策法における代表的な法制度(雇用保険法など)について整理しておくこと。(学習時間2時間)
第30回理解度の確認定期試験及び解説
授業形式 ・通常は講義形式で行うが、場合によってはグループワークを行います。
・シラバスの内容は予定であり、進行状況により変更する可能性がある。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
90% 0% 0% 10% 0% 100%
評価の特記事項 ・出席日数が明らかに2/3より低い場合には、単位取得を認めない。
・試験は、持ち込み不可とする
テキスト 小畑史子、緒方桂子、竹内(奥野)寿著『労働法〔第2版〕』(有斐閣ストゥディア)(※テキストは最新版をご用意ください。)
参考文献 ・荒木尚志『労働法〔第3版〕』(有斐閣、2016年)
・その他、講義中に適宜指示します。 

オフィスアワー(授業相談) 本授業終了後(講師室にて30分間は対応しています。)、又は、授業内で配布した指定アドレスに連絡してください。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ ・指定の教科書および参考資料(レジュメ)を活用して、予習と復習を行ってください。
・遅刻・途中退去・私語・携帯・録音・電話の使用等、他の学生の受講の妨げになる行為を禁止する。
参考URL 1 https://www.mhlw.go.jp/index.html