講義名 人文地理学概論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水2
単位数 4

担当教員
氏名
卜部 勝彦

学習目標(到達目標) 本講義では,受講生が以下の1~5の項目について達成できることを目標としている。
 1.人文地理学諸分野の基礎的な概念について説明できる。
 2.身近な地域において地理的事象を見出し,その事象を解釈することができる。
 3.一般図や主題図の性格を理解し,事例地域の特色をとらえることができる。
 4.様々な事例地域における地形図の地理学的判読(読図)ができる。
 5.学習指導要領とのかかわりのなかで中学・高校における地理教育の教材研究ができる。
授業概要(教育目的) 教職課程の「教科に関する科目」である本講義は,中学・高校の地理教育での実践に向けて,人文地理学諸分野の基礎的な概念を講述するとともに,各種一般図や主題図の性格を理解させ,それらを積極的に利用することで地図を主体とした地理的技能を身につけさせる。具体的に授業の前期は,地形図読図のスキル修得に重点を置き,後期ではそのスキルを活用しながら多様な人文地理学的諸事象を解説する。なお本講義では,文部科学省初等中等教育での官職経験(教科書調査官)をもとに,検定済み教科書使用の留意点や地理教育における学習指導要領との学問的整合性についても適宜解説する。
授業計画表
 
項目内容
第1回地理教育と人文地理学地理学における人文地理学の位置づけ,および中学・高校における地理教育の指導にむけた人文地理学的素養の必要性を学習する。
【事前学習】2時間
「地理と歴史の違いとは?」という問いに対して応答できるよう,現時点での既得知識を整理しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,テキスト②(高校の地理B検定教科書)諸内容の人文地理学的項目について確認しておくこと。
第2回地図と地理学地図の存在理由や一般的概念を通して,地理学研究での地図利用や地理教育での地図指導のあり方を学習する。
【事前学習】2時間
地理教育や地理学では,なぜ「地図」を重視するのか考えておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,自分の郷土(身近な地域)についてテキスト③(高校地図帳)の表現を理解するとともに,国土地理院「地理院地図」でも慣れ親しんでおくこと。
第3回地形図とはどのようなものか地形図(Topographic map)の概念や特色・制度について,国土地理院発行の地形図や諸外国の地形図を事例に学習する。
【事前学習】2時間
「地理院地図」で自分の郷土(身近な地域)のMy地形図(国土地理院発行1:25,000地形図)の図郭範囲を確認しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,My地形図を通して地形図の概念や特色・制度を説明できるようにすること。
第4回地形図の図式国土地理院発行の地形図の図式(いわゆる「地図記号」)について,日本大学経済学部付近やMy地形図を事例に総論的な観点から学習する。
【事前学習】2時間
GoogleMapや「地理院地図」で日本大学経済学部付近を確認するとともに,My地形図の記号凡例を入念に見ておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,国土地理院発行の地形図の図式について説明できるようにすること。
第5回地形図の土地利用表現地形図図式に照らしながら事例地域の地形図における土地利用表現の特色を分析する。
【事前学習】2時間
テキスト②(高校の地理B検定教科書)20・21頁の事例地域を範囲をテキスト③(いわゆる高校の地図帳)で位置づけできるようにしておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,My地形図の事例地域についての土地利用表現を確認すること。
第6回地形図の起伏表現
具体的な土地の起伏を確認しながら等高線の描示の特色を確認し,等高線の基本的性格を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)29頁の図郭範囲の地域を「地理院地図」で確認し,起伏形状に応じた等高線表現を予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,尾根線や谷線などの地性線抽出をテキスト①29頁でできるようにすること。
第7回地形図の地理学的判読
平野の地形について等高線配列パターンや形態,形成要因等を確認しながら地形図における地形判読法を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト②(高校の地理B検定教科書)34・35頁の記述された各地形の諸概念を文献やインターネット等で調べておくとともに,42~45頁の「TRY」を実践しておくこと。。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,平野の地形の等高線配列パターンや形態,形成要因等について説明できるようにすること。
第8回扇状地と人文地理学的事象(1)
扇状地を事例として,その形態や形成要因,地形と関連した人文地理学的事象の特徴に触れながら,具体的な事例地域の地形図の判読法を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)5頁・裏見返しの事例地域について,テキスト③(高校地図帳)と「地理院地図」で予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して扇状地の形態や形成要因および地形と関連した人文地理学的事象について説明できるようにすること。
第9回扇状地と人文地理学的事象(2)
前回学習した判読法を応用して,さらなる事例の読図作業を通して当該地域の人文地理学的事象を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)9・10頁の事例地域について,文献やインターネットから人文地理学的事象を予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して扇状地における人文地理学的事象の多様性を説明できるようにすること。
第10回氾濫原と人文地理学的事象
氾濫原を事例として,その形態や形成要因,地形と関連した人文地理学的事象の特徴に触れながら,具体的な事例地域の地形図の判読法を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)11~13頁をよく読むとともに,自然堤防と後背湿地について文献やインターネット等から予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して氾濫原における水害特性と人文地理学的事象の特色を説明できるようにすること。
第11回三角州と人文地理学的事象
三角州を事例として,その形態や形成要因,地形と関連した人文地理学的事象の特徴に触れながら,具体的な事例地域の地形図の判読法を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)53頁をよく読んで,濃尾平野の輪中地域ついて文献やインターネットで予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して三角州における水害特性と人文地理学的事象の特色を説明できるようにすること。
第12回段丘・台地と人文地理学的事象
段丘・台地を事例として,その形態や形成要因,地形と関連した人文地理学的事象の特徴に触れながら,具体的な事例地域の地形図の判読法を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)25・26頁の事例地域について「地理院地図」から予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して段丘・台地域の人文地理学的事象の多様性を説明できるようにすること。
第13回村落の立地・形態・発達
村落の概念を整理した上で,村落の立地と形態および発達について村落地理学や歴史地理学の立場からのアプローチ法を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト②(高校の地理B検定教科書)174・175頁の事例地域を範囲をテキスト③(いわゆる高校の地図帳)で位置づけできるようにしておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して村落の概念や立地・形態・発達について説明できるようにすること。
第14回新田開発地域の村落
前回の授業で学習した概念や視点を応用しつつ,新田開発地域の村落景観の多様性を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)47頁の事例地域について,地形環境を「地理院地図」等から確認しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して新田開発地域における村落景観の多様性について説明できるようにすること。
第15回北海道の開拓村落
前々回の授業で学習した概念や視点を応用しつつ,日本の村落景観の多様性を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)50頁をよく読んでおくとともに,屯田兵村の成立背景について文献やインターネット等から予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して北海道の開拓村落の多様性について説明できるようにすること。
第16回夏期課題の発表討議夏期課題研究としての各事例地域の地形図読図による地形判読や土地利用変化について受講生が発表し検討する。
【事前学習】2時間
夏期課題の発表に備えておくこと。
【事後学習】2時間
対戦型相互地形図読図で得られた知見と今後の検討課題をまとめること。
第17回食料・農業(1)世界の農業地域を概観した上で,世界と日本の食料問題を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト②(高校地理B検定教科書)106~110頁に記述された食料問題の諸概念を説明できるようにしておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して世界と日本の食料問題を地理学的に説明できるようにすること。
第18回食料・農業(2)日本の農業地域について,各種資料や主題図の利用、事例地域の地形図読図を実践しながら学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)51・52頁をよく読んで,水田地域の農地基盤整備について予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して日本の農業地域の特色や諸問題を地理学的に説明できるようにすること。
第19回食料・農業(3)日本の野菜園芸地域について,各種資料や主題図、事例地域の地形図読図を実践しながら学習する。
【事前学習】2時間
近郊農業や輸送園芸の諸概念について,中学校社会科地理的分野での学習内容を確認しておくこと。。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,「野菜園芸」にかかわる近郊農業や輸送園芸の諸概念を説明できるようにすること。
第20回食料・農業(4)日本各地の農業地域について受講生の身近な地域の事例を比較しながら学習する。
【事前学習】2時間
My地形図の読図や各種統計・文献・インターネット等で身近な地域の農業地域の特色を予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,他者との比較から日本各地の農業地域の多様性が説明できるようにすること。
第21回工業(1)産業としての工業の一般的特色を確認した上で工業立地論に触れ,工業地理学の立場からの工業に関するアプローチ法を学習する。
【事前学習】2時間
「工業の特色を説明せよ。」という問いに対して応答できるよう,現時点での既得知識を整理しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,産業としての工業の一般的特色や工業立地論について説明できるようにすること。
第22回工業(2)前回の授業で学習した概念や視点を応用しつつ,鉄鋼業や自動車工業の立地と展開について学習する。
【事前学習】2時間
日本の製鉄工場の分布をテキスト③(高校地図帳)で調べた上で,その景観を「地理院地図」から確認しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して鉄鋼業や自動車工業の立地と展開について説明できるようにすること。
第23回工業(3)
日本の工業地域について,各種資料や主題図の利用、事例地域の地形図読図を実践しながら学習する。
【事前学習】2時間
日本の工業地域について,中学校社会科地理的分野での学習内容を確認しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して日本の工業地域を総論的に説明できるようにすること。
第24回工業(4)
日本各地の工業地域について受講生の身近な地域の事例を比較しながら学習する。
【事前学習】2時間
My地形図の読図や各種統計・文献・インターネット等で身近な地域の工業地域の特色を予察しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,他者との比較から日本各地の工業地域の多様性が説明できるようにすること。
第25回都市(1)
都市の概念を整理した上で,都市圏や都市システム,都市問題などについて都市地理学の立場からのアプローチ法を学習する。
【事前学習】2時間
My地形図の図郭内で最も栄えている場所(地価が高い場所)を確認しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して都市圏や都市システム,都市問題などについて説明できるようにすること。
第26回都市(2)
日本の近世城下町起源の都市について立地・規模・形態の各観点から学習する。
【事前学習】2時間
テキスト①(地図読解入門)55・56頁をよく読んで,事例地域の地形環境を「地理院地図」等から確認しておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して近世城下町起源の都市について地理学的に説明できるようにすること。
第27回都市(3)
前回の授業で学習した概念や視点などを応用しつつ,日本大学経済学部付近における都市の地理的事象を学習する。
【事前学習】2時間
図書館にある古地図などから江戸時代において神田三崎町がどのような場所であったのか調べておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して江戸から東京への変容を地理学的に説明できるようにすること。
第28回都市(4)
日本各地の都市地域について受講生の身近な地域の事例を比較しながら学習する。
【事前学習】2時間
My地形図における都市的土地利用について「今昔マップ」を通して地理学的に説明できるようにしておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,他者との比較から日本各地の都市地域の多様性が説明できるようにすること。
第29回人口(1)人口に関する基本的な統計を確認した上で,世界と日本の人口問題について人口地理学の立場からのアプローチ法を学習する。
【事前学習】2時間
テキスト②(高校地理B検定教科書)159~169頁に記述された諸概念を説明できるようにしておくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して世界と日本の人口問題について地理学的に説明できるようにすること。
第30回人口(2)後期授業で学んだ内容を相互に関連させながら,日本の都市および農山村をめぐる人口問題について研究する。
【事前学習】2時間
後期授業の内容を総観しておくこと。
【事前学習】2時間
授業内容をよく復習し,各種地図を通して日本の都市および農山村めぐる人口問題について説明できるようにすること。
授業形式 通常は講義形式で行う。ただし教職課程科目であることをふまえ,予習内容および課題の発表や読図結果の説明を随時受講生に求めながら進めるものとする。また地理的技能の育成のために地形図読図等では地図作業を実施する。過去に配布したプリント等は必ず毎回持参するとともに,スマートフォンなどの通信機器を介してインターネットの地図情報も積極的に利用したい。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
0% 30% 0% 40% 30% 100%
評価の特記事項 「講義態度」は,単なる“出席”ではなく予習も含めた意欲・関心・態度といった授業への“参加”状況を評価対象としている。また「その他」については,夏季課題などの提出物の内容を評価するものである。
テキスト ①籠瀬良明著・卜部勝彦追補『大学テキスト地図読解入門』古今書院.
②片平博文・矢ヶ﨑典隆ほか編 『詳細地理B』帝国書院.
③二宮書店編集部編『現代地図帳』二宮書店
②と③は文部科学省検定済教科書
参考文献 浮田典良著 『地理学入門』 原書房.
人文地理学会編 『人文地理学事典』 丸善出版.
山村順次編 『図説 新・日本地理』 原書房.
帝国書院編集部編 『中学校社会科地図(文部科学省検定済教科書』 帝国書院.
文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 社会編』東洋館出版社.
文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』文部科学省WEBサイト
オフィスアワー(授業相談) 授業期間中の毎週火曜日,3時限終了後,20分間は本館2階講師室に在室。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 本講義は教員養成のための教職課程科目であり,受講に当たっては教職に関する高いモチベーションが要求される。したがって,毎回の授業では必ず事前に指定した箇所の予習をして「参加」すること。また地形図の読図作業時は12色の色鉛筆を使用する場合があるので用意しておくこと。