講義名 国際金融論Ⅰ ≪大学院≫
講義開講時期 前期
曜日・時限 水4
単位数 2

担当教員
氏名
黒沢 義孝

学習目標(到達目標) 国際金融の内容は1973年以降の為替レートの変動相場制への変更と1980年代以降の国際資本移動の自由化によって大きく変化しました。したがって為替制度と資本移動がなぜ変化したのかをよく理解し、それによって国際金融の制度と国際金融市場がどのように変化したのかを良く理解してもらいます。そのために為替変動相場制度において為替レートがどのように決定されるか、国際収支表の構造がどのようになったのか、国際資本移動がどのように行われて何に影響を与えるのか、マクロ経済を均衡的に成長させるための財政・金融政策がどのように行われ、またどのような問題点が未解決になっているのかについてよく理解してもらいます。
授業概要(教育目的) 国際金融の理論だけではなく現実の金融・経済の中でその理論がどのように使われているかがわかるようにすることを目的として講義します。国際金融の歴史については国際金融市場がどのように変遷してきたのか、為替レートについては各国の通貨が市場でどのように取引され市場で決まる為替レートがどのように決定されているかを現実的な理解ができるようにすることを目的とします。1980年代中頃から自由化が進んだ国際的な資本取引によって、現代の国際金融論の主要なテーマとなっている財政・金融政策についてGDPの成長率や物価、失業率などに国際資本移動がどのように影響を与えるかについてマンデル=フレミングモデルを使って講義します。
授業計画表
 
項目内容
第1回オリエンテーション*授業の進め方
*国際金融市場が果たす役割と理論についての説明
*いくつかのテキストの紹介と論文の読み方についての説明
*受講生の関心事項の把握
第2回国際金融の歴史と現代の金融との関係(1)*国際金融市場の変遷(バビロニアからアムステルダム、ロンドン、ニューヨーク、東京、香港・シンガポール、上海等への変遷とその原因)
*アダム・スミスの国際資本移動理論
*国際マクロ経済と国際金融の関係について
*英国のEU離脱(Brexit)とロンドン国際金融市場の行方
第3回国際金融の歴史と現代の金融との関係(2) *国際金融市場としての東京市場の特徴(企業と金融機関との関係などを踏まえて)
*ブレトンウッズ体制からニクソン大統領による米ドルの金為替本位制の停止への歴史的流れについて
*プラザ合意・日米円ドル委員会・外為法の改正などについて
*世界的低金利と中央銀行の金融政策(リバーサル・レートの問題)
*MMT理論(Modern Monetary Theory)の信憑性について
第4回為替レートの決まり方(1)  *固定為替制度と変動為替相場制度の実務的・理論的意味
*為替市場の仕組みと構造
*スポット市場と先物市場
*リスクヘッジと投機
*東京金融取引所の訪問
第5回為替レートの決まり方(2) *ランダムウオーク仮説
*金利平価説(Interest Rate Parity Hypothesis)
*購買力平価説(Purchasing Power Parity Hypothesis)
第6回為替レートの決まり方(3) *マネタリー・アプローチ
*ポートフォリオ・バランス・アプローチ
*オーバーシューティング・モデル
第7回国際収支の構造*日米EUの国際収支表による推移とその見方
*GDPと国際収支(経常収支)との関係
*経常収支の黒字と赤字の理論的意味
*ISバランス
*日本の国際収支の推移と時代別特徴
第8回国際資本移動について(1)*国際資本移動の始まりとその後の展開
*資本移動と為替レート・金利・債券価格・株価との関係
第9回国際資本移動について(2)*国際資本移動と通貨・金融危機の関係
*中南米の累積債務問題(1982年)
*ヨーロッパ通貨危機(1992年)
*メキシコの通貨危機(1995年)
*アジア通貨危機(1997〜98年)
*リーマンショックとユーロ通貨圏経済危機の関係
第10回マクロ経済と財政・金融政策(1)*マクロ経済と財政・金融政策との関係
*IS曲線の作成プロセス
*流動性選好に基づく貨幣需要曲線によるLM曲線の作成プロセス
*固定為替相場におけるケインズの財政・金融政策のメカニズムと政策の効果
第11回マクロ経済と財政・金融政策(2)*変動為替相場におけるマンデル=フレミングモデルの財政・金融政策の効果
*国際政策協調の必要性と財政・金融政策の関係
*マンデル=フレミングモデルの金融政策における問題点
第12回マクロ経済と財政・金融政策(3)*変動為替相場における国際間の財政・金融政策の影響
*先進国、新興国、途上国のマクロ経済と財政・金融政策の差異と特徴
第13回ユーロ通貨統合とその後の制度改革*ユーロ通貨圏の制定プロセス
*通貨統合の成果(インフレ率・財政赤字・域内貿易・リスクプレミアム)
*ユーロ通貨危機(ギリシャ危機・金融危機・ソブリン危機)
*当面の制度改革と財政統合の必要性と可能性
第14回ソブリン債の信用リスク*格付け機関大手3社(Moodys, S&Ps, Fitch)によるソブリン債格付けの手法と格付け推移
*ソブリン格付けの役割と問題点
*日本国債、アメリカ国債、中国の国債の格付けのポイントと今後の見通し
第15回質疑応答(前回に書面で書面で受けた質問に対する回答)Answers to the Questions received in advance from students*第13回・14回の授業時に質問事項を受け付ける
*これまでの授業で不足したテーマについての説明
授業形式 教員による講義を中心に進めますが、それぞれのテーマについて主要著書や論文、経済雑誌の記事などを紹介します。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
0% 50% 0% 50% 0% 100%
評価の特記事項 講義の中のテーマについて口頭で議論するだけでなく簡単にレポートも作成できるようにして欲しいと思っています。授業はできるだけ休まないで教員との会話を通じて現実の問題点を頭の中でまとめれるようにしてほしい
テキスト 『激動する国際金融』黒沢義孝著、梓出版社(2000年6月)少し古いのでネットで探してください。
参考文献 『国際金融理論』新・国際金融テキスト1 有斐閣
オフィスアワー(授業相談) 授業時に指示します。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 国際金融やマクロ経済、金融に興味のある学生には最適な講義になると思います。