講義名 租税法総論 ≪大学院≫
講義開講時期 後期
曜日・時限 水7
単位数 2

担当教員
氏名
脇本 利紀

学習目標(到達目標) 租税法律主義、租税法の法源、租税法の解釈、借用概念、信義則など租税法総論を構成する事項が争点となった判例を読み解くことを通じて租税法に基底する概念の習得を目指します。このような学習を通じて事実認定や法律の当てはめといった実務的な能力を身につけていただきます。
授業概要(教育目的) 憲法と租税法、私法と租税法の関係など実社会や実務において出会うであろう税務問題に対応し得るタックスリーガルマインドを身につけていただくことを目的としています。講義の進行に際しては受講者諸君の積極的な議論への参加を期待しています。
授業計画表
 
項目内容
第1回導入講義の進め方などについて説明した後に、金子宏先生の「租税法」に則して租税法総論についての知識の共有を図る。(シラバス執筆現在は第23版が公刊されているが、本書は例年4月頃、改訂が行われる。講義では最新版を用いるので留意されたい。)
(事前学習)2時間
金子宏「租税法」の第1編第4章「租税法の基本原則」(第1節及び第2節)、第5章「租税法の法源と効力」を通読しておくことこと。
(事後学習)2時間
講義内容を理解し、本講義で取り上げる事例との関係を理解すること。
第2回租税の意義(前半)引き続き、金子宏先生の「租税法」に則して租税法総論についての知識の共有を図る。
(事前学習)1時間
金子宏「租税法」の第1編第6章「租税法の解釈と適用」を通読しておくことこと。
(事後学習)1時間
講義内容を理解し、本講義で取り上げる事例との関係を理解すること。
(後半)最判平成18.3.1「旭川市国民健康保険条例事件」を題材に憲法84条における租税の意義とは何かについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№2」(8~9頁)を通読しておくこと。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第3回租税法律主義(1)(前半)租税法律主義に係る事例①
最判昭和60.3.27「大島訴訟」を題材に、租税法における公平主義とは何か、租税法規の違憲審査基準は何か、給与所得における必要経費とは何かなどについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№1」(4~7頁)を通読しておくこと。
(事後学習)議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)租税法律主義に係る事例②
最判昭和33.3.28「パチンコ球遊器事件」を題材に、慣習法が成立するのはどういう場合かについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№6」(16~17頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第4回租税法律主義(2)(前半)租税法律主義に係る事例③
大阪高裁昭和43.6.28「大坂銘板事件」を題材に、行政命令への委任が有効であるためには、どのような委任である必要があるかについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第3版№3」(8~9頁)を通読しておくこと。(「租税判例百選」の第5版以前に掲載されている判例については、初回の講義の際に説明する。以下同じ。)
(事後学習)議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)租税法律主義に係る事例④
東京高裁平成7.11.28「協同組合員登録免許税軽減事件」を題材に、法律が命令に委任できる場合はどのような場合かについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№4」(12~13頁)を通読しておくこと。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第5回租税法律主義(3)(前半)租税法律主義に係る事例⑤
最判昭和49.9.2「電力中央研究所事件」を題材に、納税者と課税庁の合意は信義則が適用されるかについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第3版№57」(116~117頁)を通読しておくこと。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。余力のある者は「租税判例百選第6版№5」(14~15頁)の事例を研究すること。
(後半)租税法律主義に係る事例⑥
大阪高裁昭和44.9.30「スコッチライト事件」を題材に、租税公平主義とは何か、信義則の適用をどのように考えるか、について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№9」(21~22頁)を通読しておくこと。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第6回租税法律主義(4)(前半)租税法律主義に係る事例⑦
 最判平成23.9.22「土地譲渡損失損益通算拒否事件」を題材に遡及立法について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№3」(10~11頁)を通読しておくこと。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)租税法律主義に係る事例⑧
 東京高裁平成11.6.21「交換か売買か」が争点となった事件を題材に租税回避について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№17」(36~37頁)を通読しておくこと。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第7回会計原則(前半)会計原則に係る事例①
最判平成5.11.25「大竹貿易株式会社事件」を題材に、収益計上のタイミングをどのように考えるかについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№62」(122~123頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)会計原則に係る事例②
最判平成6.9.16「株式会社エス・ヴィ・シー事件」を題材に、違法支出には費用性があるかについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№52」(102~103頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第8回租税法の解釈(1)(前半)租税法の解釈に係る事例①
最判平成9.11.11「レーシングカー物品税事件」を題材に、租税法の解釈(「普通乗用自動車」の法令上の解釈とは何か)について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第4版№14」(28~29頁)を通読しておくこと
(事後学習)議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)第2回~第7回の復習
第2回~第7回までに取り上げた事例についての意見等を求める。
(事前学習)1時間
各回の「事後学習」の成果を整理しておくこと
(事後学習)1時間
議論などを踏まえ理解を更に深めること。
第9回租税法の解釈(2)(前半)租税法の解釈に係る事例②
最判平成22.3.2「ホステス報酬源泉徴収事件」を題材に、租税法でいう「期間」とはについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№13」(28~29頁)を通読しておくこと。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)租税法の解釈に係る事例③
最判昭和62.10.30「酒類販売業者青色申告事件」を題材に、租税法における信義則適用の場面について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№16」(34~35頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第10回借用概念(前半)借用概念に係る事例①
最判平成23.2.18「武富士事件」を題材に、租税法上の「住所」の概念とは何かについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№14」(30~31頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)借用概念に係る事例②
最判昭和35.10.7「鈴や金融事件」を題材に、ある所得が配当所得に該当する基準とは何かについて理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第5版№36」(65頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第11回納税者と課税権者の関係(前半)納税者と課税権者の関係に係る事例①
最判昭和39.10.22を題材に、租税法の分野において錯誤の主張が認められる場合について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№102」(198頁)を通読しておくこと。余力のある者は「租税判例百選第4版№96」(194~195頁)の解説を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)納税者と課税権者の関係に係る事例②
最判平成18.1.19に基づき、第二次納税義務(国税徴収法)について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№24」(50~51頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第12回質問検査権(1)(前半)質問検査権に係る事例①
最判昭和47.11.22「川崎民商事件」を題材に、憲法で規定されている適正手続きの保障と質問検査権の行使について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第4版№103」(208~209頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)質問検査権に係る事例②
最判昭和48.7.10「荒川民商事件」を題材に、憲法で規定されている適正手続きの保障と質問検査権の行使について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№111」(213~214頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
第13回質問検査権(2)(前半)質問検査権に係る事例③
 東京高裁平成9.6.18に基づき、質問検査権行使の範囲について理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第4版№104」(210頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)質問検査権に係る事例④
最判平成16.1.20に基づき、刑事手続と質問検査権の関係について議論を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№123」(234~235頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を深めること。
第14回取得時効と課税(前半)取得時効と課税に係る事例
静岡地裁平成8.7.18に基づき、取得時効と課税についての理解を深める。
(事前学習)1時間
「租税判例百選第6版№15」(32~33頁)を通読すること。
(事後学習)1時間
議論された各種論点を整理し、題材となった事例の理解を更に深めること。
(後半)第8回~第13回の復習
第8回~第13回までに取り上げた事例についての疑問や意見を求める。
(事前学習)1時間
各回の「事後学習」の成果を整理しておくこと。
(事後学習)1時間
議論などを踏まえ更に理解を深めること。
第15回これまでの事例研究のまとめ受講生の意見や疑問等に基づき議論を深める。また、レポートの課題を周知する。
(事前学習)2時間
これまでの講義で取り上げた事例について、各位の意見等を整理しておくこと。
(事後学習)2時間
講義での議論などを踏まえ更に理解を深めること。
授業形式 テキストを基に講義方式により進めますが、受講生との双方向の進行に心がけ、必要に応じ意見交換なども実施しながら理解を深めていきます。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
0% 60% 0% 40% 0% 100%
評価の特記事項 特になし
テキスト 金子宏「租税法(第23版)」、弘文堂、2019年、6,500円(税抜).
中里・佐藤・増井・渋谷編「租税判例百選(第6版)」、有斐閣、2016年、2,600円(税抜).
参考文献 金子・佐藤・増井・渋谷編「ケースブック租税法(第5版)」、弘文堂、2017年、4,500円(税抜)
オフィスアワー(授業相談) 初回講義の際に説明します。質問などについては原則として翌週の講義で説明しますが、大きな論点については第15回の講義の際に再度、フィードバックします。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 租税法総論の分野は、憲法や私法など他の法律との関係が論点になることが多く、実務においては避けて通ることのできない論点とも言えます。租税実務の経験を有する教員がこれまでの経験も織り交ぜつつ丁寧な説明に心がけます。講義に当たっては受講生諸君の積極的な参画を期待しています。また、条文を読む習慣を身につけて下さい。