優秀賞 個人部門(学部生) 大滝 謙祐
社長交代が企業業績に与える影響分析
本稿では、社長交代における社内CEOと社外CEOが企業業績に与える影態について、前社長の在任期間を考慮しながら定量分析を行った。分析結果によれば、全サンプルにおいては社内CEOの方が企業業績に良い影態を与えることが明らかになった。また、前社長の在任期間が9年以下の場合、社内CEOと社外CEOの企業業績への影態に優劣は見られなかったが、在任期間が10年以上の場合には社内CEOを選任した方が企業業績に良い影響を与えることが確認された。この結果から、前社長の在任期間が長い場合、社内CEOが選ばれることで企業業績に好影響をもたらす傾向があると結論づけられる。
この理由として、前社長の在任期間が10年以上の場合、企業が長年にわたって蓄積した経営知識の「深化」と「共有」の重要性が浮き彫りとなる。社内CEOは、企業特有の知識やノウハウを共有しやすく、その共有のプロセスを実際に経験しているため、組織内の継続性を商める役割を果たす。社外CEOはこれらの知識を十分に共有できない可能性が高く、その結果、業績に負の影態を及ぼす場合があると考えられる。
ただし、本稿にはいくつかの限界が存在する。第一に、業界別の分析を行っていないため、業種ごとに異なる影響の特性を考慮していない点が挙げられる。第二に、使用したデータは2000年以降のものであり、それ以前の長期的な傾向を分析することができなかった。このように本稿にはいくつかの限界があるが、どの企業でもいつかは直面する社長交代という問題においては、新たな社長を内部から抜擢するか外部から抜擢するかという議論を行う上で重要なヒントを与えるだろう。これまでの社長交代についての様々な先行研究を補完し、日本企業により詳細な知見を与えるものと考える。