WHOコラボレーティング・センター

日本大学人口研究所(Nihon University Population Research Institute :以下NUPRI)は2007年に WHOより世界で初めて人口・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)・開発の3分野でWHOコラボレーティング・センターとして認定されました。NUPRIは、日本で唯一の人口問題を扱う大学の附置研究所として、1979年に創設されて以来、調査・研究を続けており、その知見は学術的な貢献をするとともに、国内外のメディア等にも取り上げられています。
かつて国際的な人口問題は人口が増加する人口爆発が大きな問題で、貧困とも関係していました。一方、出生率の低下は人口構造の変化にともない、人口高齢化を招き、人口爆発と同じような世界的な大問題となりつつあります。その中で、途上国、先進国ともに出生率が低下しており、親子の関係、10代の妊娠や性行動などリプロダクティブ・ヘルスの問題を考えなければいけない状況が急務となってきました。出生率低下により明示的に起こる人口高齢化は先進諸国のみならず、多くの開発途上国にも深刻な経済・社会的な問題を次々に引き起こしています。このような状況に関してNUPRIは、これまで人口問題に関して、国際的な研究活動を推進しており数々の実績をあげてきましたが、このような21世紀に直面する人口問題をWHOと共同で解決するためにコラボレーティング・センターとして活動しています。
NUPRIではリプロダクティブ・ヘルスに関する多くの研究成果が発表されていますが、その研究のベースになっているのが、NUPRIがWHOと共同で実施した「仕事と家族に関する全国調査」です。この調査は毎日新聞社人口問題調査会が1950年から2004年までに16歳から49歳の女性を対象としてほぼ隔年で26回行った「全国家族計画世論調査」に続いて、2007年と2010年に対象を20歳から59歳男女としてNUPRIがWHOと共同で行った横断調査です。その後、この調査は文部科学省の特別推進研究の助成を受け「少子高齢化社会における家族・出生・仕事に関する全国調査」として、2018年、2020年と継続的に調査を実施しています。これらの調査データは、70年にわたって出生、避妊、女性の労働、結婚、家族、育児、介護などに関して、経年的な意識などの変化をミクロデータ分析で捉えることが可能であるわが国唯一のデータ・ソースです。世界でも例のない長期間にわたり同じサンプリング・フレームワークでほぼ同じ質問票をベースとした調査であり、世界の人口問題解決に対する貢献が評価され国連人口賞を受賞しています。
現在では、男性不妊においては世界的拠点になっているコペンハーゲン大学やハーバード大学などと共同で研究を進めています。また、国会議員や政府関係者を集めたワークショップを開催し、知見を広めることにも従事しています。