東京一極集中は本当に問題なのか?

みなさんは、「東京一極集中が今の日本が抱える大きな問題だ」という主張を聞いたことはないでしょうか。実際に政府は、人や様々な機能の地方への分散を長い間追及してきました。しかし、なぜそれが必要なのかについては、災害リスクの分散という指摘を除けば、必ずしも説得的な議論は行われていないように思います。ぜひ、東京の真ん中の日本大学経済学部で、「東京一極集中が本当に問題なのか」について、一緒に考えてみませんか。

When

いつから東京一極集中が始まったの?

20世紀のはじめから日本は大都市への人口集中を経験してきました。スペイン風邪、関東大震災、第二次世界大戦、COVID-19によるパンデミックなど、大都市に大きなダメージを与えるショックがあっても、この都市化はとまりませんでした。同じような傾向がほかの先進国でもみられます。政府はこの大都市への集中に歯止めをかけようと様々な取り組みをしてきましたが、あまり効果をあげていません。1980年代からは特に東京大都市圏への集中が際立ってみられるようになりました。

Why

なぜ東京に人口は集中するの?

大都市は様々な経済活動を支え、生活を豊かにしてくれる基盤を提供してくれます。この文章を読んでくれている若い皆さんは、それぞれの人生観、スキル、心身の特徴を持っていると思います。皆さんは、いずれご自身の生活を支える職業や、長い時間をともにするパートナーを選ぶことになります。よいマッチングを実現するためには、多様な職業、相手とのフェイスツーフェイスの交流ができる環境が重要です。他にも都市が提供してくれる利点はたくさんありますが、経済学はそれを集積の経済といいます。

How

東京一極集中にどう対応すればいいの?

大都市への集中を避けるために政府は、様々な政策を行ってきました。大都市に工場や大学を設置することを禁止するといった、乱暴な手段がとられた時代もあります。忘れてはならないのは、私たち自身が今の状態を選択しているということです。豊かな生活やそれを支える生産活動を生み出すために、人口の集中が起こっています。頭から東京一極集中を受け入れないのではなく、我々自身がどんな日本の在り方を選択するかを真剣に議論することが必要です。

コラムを書いてくれたのはこの先生

中川 雅之 教授 MASAYUKI NAKAGAWA

PROFILE

1984年京都大学経済学部卒業。経済学博士(大阪大学)。1984年建設省入省後、2004年から日本大学経済学部教授。現在、国家戦略特別区域諮問会議議員、日本計画行政学会会長、日本公共政策学会会長。

THEME

都市住宅政策の経済分析。著書に『都市住宅政策の経済分析』(2003年、日本評論社、日経・経済図書文化賞)、『人口減少時代の住宅土地問題』(山崎福壽との共著)(2020年、東洋経済新報社)。

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