世の中で企業はどんな役割を果たしているの?

日本には多くの企業が存在しており、企業抜きには私たちの暮らしは成り立たないといってもよいでしょう。そんな企業と社会とのつながりについて、いくつかの観点からちょっとだけ掘り下げて考えてみましょう。

What

そもそも企業ってどんな存在?

ひと言で企業と言っても、実ははさまざまな側面があります。そのうち、多くの人にとってなじみがあるのは、次の2つでしょうか。


消費者から見た企業
企業は有用な商品・サービスを提供してくれます。たとえば、コンビニに行けばドリンクやお菓子、雑誌などの欲しい商品が手に入ります。その商品を作るのが飲料・食品メーカーや出版社であり、その商品を店頭に揃えて販売するサービスを行うのがコンビニです。


働き手から見た企業
企業で働いて得た報酬(給料)で生計を立てている人も多いはずです。企業の中で働く人は、主にその商品・サービスを生み出す活動に携わっています。具体的には、どんな商品を作るかを考えたり(開発)、原材料を仕入れて(調達)、それを加工したり組み立てたりして(製造)、顧客に届ける(販売)といった活動が挙げられます。

Why

コロナ禍でも「恐慌」にならなかったのはなぜ?

コロナ禍の最初の頃(2020年の春過ぎ)を振り返ると、疫病による健康面の不安もさることながら、経済面での先行きについてかなり悲観的な見方も少なくありませんでした。たとえば、ビジネス系雑誌の表紙では「大恐慌」「雇用崩壊」「収入激減」などのやや過激とも思われる言葉が並びました。けれども、日本に限定してその後の経過を見ますと、コロナ禍前と比べて失業率が跳ね上がるとか、新卒学生の就職が著しく困難になるといった、当初喧伝されていたような極端に深刻な状況は今のところ観察されていません。少なくとも現時点において、上述した悲観的な見立ては誤っていたように思えます。

では、懸念されていた事態はなぜ回避できたのでしょうか?いろいろな理由が考えられましょうが、国内企業がコロナ抑制に配慮しながらも、供給を絶やさず、従業員の雇用も維持したことは無視できません。そこには、グローバル・サプライチェーンが維持されたことや企業向けの公的支援の効果もあったのかもしれませんが、それ以上に個々の企業による必死の自助努力については強調しても良いでしょう。

また、経済活動に対してさまざまな面で半ば強制的なブレーキがかけられた状態が続いたにもかかわらず、企業の提供するさまざまな商品・サービス(これは生活必需品やインフラに限りません)を、私たち消費者が求めたことも指摘できます。つまり、コロナ禍だからといって需要が完全に消えてなくなったわけではないのです。ここで浮き彫りになった、企業の提供する商品・サービスが私たちの社会生活の隅々まで浸透していたという当たり前の事実に目を向けると、日本社会における企業の存在の大きさがあらためて実感できるかもしれません。

Who

そのような日本の企業システムを作ったのは誰?

明治以降の近代化や戦後の高度成長が典型的ですが、ご存知の通り、日本は世界が驚くほどの経済発展を成し遂げました。このような経済発展を実動部隊として支えたのは民間ビジネスにほかならず、それを先導したのが企業家と呼ばれるような実業人です。その筆頭格である渋沢栄一には、最近、大河ドラマや新一万円札で注目が集まっていますが、日本史の教科書ではほんの少し言及がある程度です。しかし、彼が設立に関与した企業は500社にも上ると言われ、その中にはよく知られた現存の企業のルーツになったものも少なくありません。現代を生きる私たちは、そのような先人の仕事の延長線上に立っていると言えます。近ごろは日本の将来を憂慮する声も少なくありませんが、昔の実業人がどんな風に企業を発展させてきたのかと思いを巡らすと、案外と未来志向の発想になるかもしれませんよ。

コラムを書いてくれたのはこの先生

兒玉 公一郎 教授 KOICHIRO KODAMA

PROFILE

1998年一橋大学商学部卒、全日本空輸㈱勤務の後、2005年一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース修了、2011年同博士後期課程修了。博士(商学)。2021年より日本大学経済学部。

THEME

経営学、経営戦略論、イノベーション論。
主に、日本企業による国際競争力の確立や新技術の開発・普及プロセスについて分析しています。

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