GUやユニクロで有名なファーストリテイリングが 今年から25万5000円だった初任給を30万円に上げたのはなぜ?

ファーストリテイリングが初任給を一気に5万円近く上げたのは、グローバル基準に合わせるためと、良い人材を雇うためです。ファーストリテイリングは海外にたくさんの支店があり、日本よりも高い水準の賃金を払っていましたが、日本もそれと同じぐらいの賃金額に合わせることになり、初任給も上げました。また、初任給が高ければ、良い人材を獲得しやすいです。他にもNECは2019年に優秀な研究者には新入社員でも年収1000万円以上を支払う制度を導入し、サイバーエージェントは2023年の新入社員の初任給を42万円に引き上げました。

Where

どこの国の初任給が高いの?

年収ベースですが、平均でスイスが800万円台、アメリカが600万円台、ドイツが500万円台、ノルウェーが400万円台です。

日本企業の初任給の平均は月給が22万8500円(令和4年)で、年収にすると262万円程度です。スイスで働くのは難しいかもしれませんが、アメリカの大学に入り、そのままアメリカで働けば、日本の倍以上の賃金がもらえることになります。

Why

なぜ海外とこんなに初任給が違うの?

日本は人基準で賃金が支払われ、海外では仕事基準で支払われるからです。

人基準とは、その人の年齢、勤続年数、保有能力に対して支払われます。新入社員は若くて、まだ働く能力が低いので、組織の中で一番低い賃金になります。仕事基準だと、やっている仕事に対して支払われるので、若い人がしても、年配の人がしても、同じ賃金です。逆に、海外では同じ仕事を素早くできるようになっても、賃金は上がりません。

When

初任給が注目されるようになったのはいつから?

大幅な引き上げが話題になっているのはここ1、2年のことです。

日本の企業には賃金表があり、新入社員は表の一番低い賃金からスタートします。初任給(スタート地点)を上げるということは、賃金表のすべての金額を上げる必要がありますので、企業にとってかなりの負担でした。しかし近年、初任給が安くて、優秀な技術を持った若者が外資系や海外の企業に行ってしまうので、日本企業も仕事基準(ジョブ型)を導入することにより、特定の仕事の賃金だけを上げるようになってきています。

今後は企業間だけでなく企業内でも初任給の差が広がっていきます。

これまで、同じ企業に就職すれば、初任給は文系でも理系でも最終学歴(高卒か、大卒か)が同じであれば同じ金額でした。しかし、今後は優秀な人材を日本国内だけでなくグローバル規模で企業が獲得競争をする可能性があります。そうなると、どこの会社に入るかよりも、何の仕事をするか、どんな技術があるかによって、初任給にかなりの格差が付くようになってくるでしょう。そんなことも念頭に入れながら、学部選びをしてみてはいかがでしょうか。

コラムを書いてくれたのはこの先生

加藤 恭子 准教授 KYOKO KATO

PROFILE

ケンブリッジ大学大学院経営修士を修了後、教育番組を製作する会社に勤務。その後、日本大学大学院経済学研究科博士課程に入り、経済学部の助手、専任講師を経て、現在准教授。

THEME

人的資源管理論の中で評価と育成を中心に研究/コンピテンシー評価/コンピテンシー・モデル/従業員満足

© Nihon University College of Economics All rights reserved.