Q. ゼミではどんなことを研究していますか?
日本各地の産業・文化・景観・環境について、具体的な研究対象地域を設定してフィールドワーク(野外調査)から諸事象の地域的特色や地域問題を経済地理学的手法で究明します。経済学部生が東京都千代田区という日本の政治・経済の中心地で学び、行動しているので、ゼミの共同研究は東京の対極に位置付けられるような地方をフィールドとします。
広く日本の国土の実態を把握するためには、東京中心的な思考から抜け出し、旅行でも訪れないような地域に出向き、事象を直接自分の目で観察・確認しつつ、現地の人々と触れ合うことで地方の現実や課題にアプローチすることが大切です。こうした現地体験は、卒業後のさまざまな進路先できっと役立つものと確信しています。もちろん、社会科教師を目指す学生は別途、地理教育スキルを身に付けることもできます。
【過去共同研究テーマの例】
福岡県八女市の山村課題・北海道沼田町の利雪と稲作・愛媛県上島町の離島振興
Q. ゼミの様子は?
共同研究では2・3年生が合同で3つ程度の班単位で活動しています。夏休み前までは、予察として文献や統計データの分析、もしくは地形図の読図結果などを代表者に発表してもらいます。夏休み中に現地フィールドワークを実施し、休み明け以降は調査結果をまとめます。フィールドワークは現地集合・解散を原則としているので、その前後に広域的な旅行を計画する旅行好きな学生も多いようです。
Q. ゼミの特徴は?
日本各地のフィールドワークが最大の特色です。対象地域と研究テーマは学生の企画案の中から採用しています。現地では市町村役場の担当者や農家、工場の経営者などに直接インタビューを行い、そこで得られた各種データや施策・経営方針などを総合的に分析・考察し、結果は日本大学地理学会などで発表します。分析や結果のまとめ作業には根性が必要ですが、苦労の後で随時開催する慰労会は格別です。
これまでの卒業論文・研究論文のテーマ例
- 長野県北信地域における克雪住宅の分布からみた積雪景観
- 山形県高畠町における有機農業の展開
- 神奈川県三浦市における野菜産地の持続的発展
- 本州以南における競走馬産地の地域的特色
- 東京都武蔵野市における学校給食と地産地消
- 都市河川「渋谷川」の景観変遷と親水コミュニティ
1年間の主なイベントスケジュール
05月 新歓日帰り巡検・新ゼミ生歓迎会
09月 夏合宿(共同研究の現地フィールドワーク)
11月 日本大学地理学会(文理学部)での発表
12月 日帰り巡検・忘年会
02月 春合宿(卒業生送別会を兼ねた親善旅行)
※慰労会・コンパは不定期で随時実施
OB・OGの就職業界TOP3
- 流通業(商社・百貨店・量販店など)
- 不動産業(土地開発・不動産販売など)
- サービス事業(税理士・会計士・コンサルティングなど)
取得者の多い資格
- 中学校教員免許(社会)
- 高等学校教員免許(地歴・公民)
学生へのメッセージ
東京生まれ関西育ち。学生時代は鉄道写真撮影に没頭(現在は活動休止)。40歳代で剣道を再開し現在四段。研究分野は農業地理学に始まり地図学や地理教育まで幅を広げてきました。経済学部では、主として教職科目の「人文地理学概論」「地誌学」および総合教育科目の「地理学」を担当しています。社会科教員を目指す人はもちろんのこと、地理好き・地図好き・旅行好き(鉄道好きを含む)、もしくは根性がある学生なら、ぜひご一緒に研究しましょう。
研究成果
農業地理学分野では、都市緑化に不可欠な緑化樹木の生産と流通の地理学的研究を行っています。既存の統計データが少ない研究課題なので、全国各地の生産地域の形成要因と変容を徹底したフィールドワークによって実証的に究明してきました。例えば新3号館に植栽された個々の樹木が「どこの生産地域から、どのような流通過程を経たのか」といったことに、とても興味を持っています。
また、地図学や地理教育の分野では、地形図の読図論や地図指導について、現状の課題や指導の改善方法などをいくつか指摘してきました。最近は、中学校での社会科教員の授業現場を訪問し、地図指導について臨床的な見地から改善方法を模索しているところです。「なぜ地図嫌いの生徒が生まれるのか?」「どうすれば地図アレルギーを緩和できるのか?」といったことに神経を注いでいます。
愛媛県上島町岩城島の造船業調査
日本大学地理学会(文理学部)での発表の様子