使用データ及び分析方法の説明

「AI等テクノロジーと世帯における無償労働の未来:日英比較」データビジュアライゼーション・ウェブサイト

使用データについて

日本:総務省統計局「平成28(2016)年 社会生活基本調査」調査票A・調査票Bデータ

英国:Gershuny and Sullivan (2017)「英国生活時間調査, 2014-2015年(The UK Time Use Survey (UKTUS), 2014-2015)」

参考文献

Gershuny, J., Sullivan, O. (2017). United Kingdom Time Use Survey, 2014-2015. Centre for Time Use Research, IOE, University College London. [data collection]. UK Data Service. SN: 8128, http://doi.org/10.5255/UKDA-SN-8128-1

*「平成28年 社会生活基本調査」の個票データは、統計法第33条に基づき、総務省統計局への二次利用申請を行い入手した。英国生活時間調査2014-2015年の個票データは英国データ・アーカイブを通じて入手した。

用語・分析方法について

無償労働の時間生産

無償労働の実行時間。国、性、年齢別一人当たり平均時間(週当たり)として計算。

無償労働の時間消費

無償労働の消費時間。性、年齢別一人当たり平均時間(週当たり)として計算。国民時間移転勘定(National Time Transfer Accounts: NTTA)の手法を用いて推計。詳細については、以下のサイトを参照のこと。

URL: https://www.countingwomenswork.org/about/methodology

無償労働の時間純消費

無償労働の時間消費から時間生産を引いた値。無償労働の時間純消費がプラスである場合は、各年齢の一人当たり平均で見た場合に、無償労働時間の消費が生産を上回っている(消費>生産)、すなわち無償労働時間が不足していることを意味しており、これがマイナスである場合は、無償労働時間の生産が消費を上回っている(消費<生産)、すなわち無償労働時間の余剰が生じていることを意味している。無償労働の時間純消費がプラスである場合は、その分を他の性、年齢グループから無償労働時間の移転を受けていることを意味している。これがマイナスである場合は、その分の無償労働時間を他の性、年齢グループに移転を行っていることを意味している。

専門家(技術者、AI関連研究者ら)による無償労働時間の自動化確率

AI関連の研究や事業に携わる日英の専門家65人に、17種類の無償労働*について、5年後及び10年後における自動化の確率とそのサービス・製品の予想市場価格を尋ねたデルファイ調査から得た数値。調査は2020年9月から2021年6月にかけてオンラインで行われた。調査方法の詳細については、Lehdonvirta et al. (2023)を参照のこと。

*:17種類の無償労働とは、調理、食後の後片付け、掃除、衣類等の作成、洗濯、アイロンがけ、庭仕事、ペットのケア、家や車の手入れ、食品の買い物、その他の買い物、公的・商業的サービスの利用及び世帯管理、乳幼児の身体の世話と監督、子どもの教育、子どもと遊ぶ、子どもの付き添い・送迎、家族(子ども以外)の介護・看護・身の回りの世話である。なお、分析・シミュレーションでは、食品の買い物とその他の買い物は合計(自動化確率は平均)してひとつの活動種類としたため、16種類の無償労働についての結果を示している。

参考文献

Lehdonvirta V, Shi LP, Hertog E, Nagase N, Ohta Y (2023) The future(s) of unpaid work: How susceptible do experts from different backgrounds think the domestic sphere is to automation? PLoS ONE 18(2): e0281282. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0281282

世帯における無償労働自動化サービスの利用意向

日英の一般世帯を対象に実施された世帯調査から得た数値。17種類の無償労働について、以下のいずれかの設問に対し、「はい」と回答した割合を国、性、年齢グループ別に表示。「(自動化の)技術があったとしたら、あなたのご家庭での利用を検討しますか。はい=1、いいえ=2」あるいは「〇〇円(専門家が予想する最低価格)であなたのご家庭ではこれを利用すると思いますか? はい=1、いいえ=0」。

調査のサンプル数は、日本24,727人、イギリス11,695人。

*日英の世帯調査に関する参考情報を掲載したウェブサイトを後日アップする予定です。

世帯における無償労働の自動化確率

日英の専門家から得た無償労働時間の自動化確率(17種類の無償労働別×5年後/10年後)と日英の世帯調査から得られた世帯における無償労働自動化サービスの利用意向(国、性、年齢グループ別)を掛け合わせて得た本研究オリジナルの数値で、無償労働の実質的な自動化確率を表す。

また参考として、各無償労働活動に対応する職業の自動化確率を適用した場合の自動化確率も表示した。例えば、調理であれば調理師、掃除であればメイドや掃除夫、用務員、洗濯であればクリーニング工等のように、無償労働の各活動に近い職業を割り当て、その職業が将来自動化される確率を用いた。職業の自動化確率は、Frey and Osborne (F&O)(2017)、Nomura Research Institute (NRI)(2015)、The UK Office of National Statistics (ONS) (2019)の3種類から選択可能となっている。各職業の自動化確率については以下の参考文献を参照されたい。また、職業の自動化確率を日英の無償労働にリンクした方法の詳細については、Hertog et al. (2023)を参照されたい。

参考文献

Frey C and Osborne M (2017) The Future of Employment: How Susceptible Are Jobs to Computerisation? Technological Forecasting and Social Change 114: 254–80.

Hertog, E., S. Fukuda, R. Matsukura, N. Nagase, and V. Lehdonvirta (2023) The future of unpaid work: Estimating the effects of automation on time spent on housework and care work in Japan and the UK, Technological Forecasting and Social Change 191: Article 122443.

Nomura Research Institute (2015) Nihon no rōdō jinkō no 49-pāsento ga jinkō chinō ya robotto-tō de daitai kanō ni (49% of Japan’s working population can be replaced by artificial intelligence and robots). Retrieved from https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf.

The UK Office of National Statistics (2019) The Probability of Automation in England: 2011 and 2017. Retrieved from https://www.ons.gov.uk/employmentandlabourmarket/peopleinwork/employmentandemployeetypes/articles/theprobabilityofautomationinengland/2011and2017.

無償労働の時間純消費(人口計)の年次推移:自動化がない場合

国、性、年齢(5歳階級)別1人当たりの無償労働の純消費に、対応する国、性、年齢(5歳階級)別人口を掛け合わせた値。人口全体の無償労働の時間純消費(週当たり)を表している。単位は人‐時間(人×時間)で延べ時間数を表す。国、性、年齢(5歳階級)別1人当たりの無償労働の純消費は不変であると仮定して、人口構造のみが変化した場合に、無償労働の時間純消費(人口計の値)が将来どのように変化するのかを示している。無償労働の時間純消費について、性、年齢別人口の大きさを加味した延べ時間数で表示している。一人当たりの無償労働の時間純消費と同様に、この値がプラスである場合は、無償労働時間の消費が生産を上回っている(消費>生産)、すなわち無償労働時間の不足を意味しており、これがマイナスである場合は、無償労働時間の生産が消費を上回っている(消費<生産)、すなわち無償労働時間の余剰を意味している。

無償労働の時間純消費(人口計)の年次推移:自動化がある場合

上記の「無償労働の時間純消費(人口計)の年次推移:自動化がない場合」に、本研究で得た無償労働の自動化確率(10年後における予測値)を割り引いて計算した「無償労働の時間純消費(人口計)」の年次推移。無償労働の自動化が進んだ場合における、国、性、年齢別の無償労働の時間純消費(人口計)の推移を表している。無償労働の自動化については、本研究で推計した自動化確率の他に、Frey and Osborne (F&O)(2017)、Nomura Research Institute (NRI)(2015)、The UK Office of National Statistics (ONS) (2019)らによる職業の自動化確率を適用したケースについても示した。各自動化確率の詳細については、「世帯における無償労働の自動化確率」の項を参照されたい。

将来足りなくなる無償労働時間

「無償労働の時間純消費(人口計)の年次推移:自動化がない場合/自動化がある場合」から計算した値の年齢合計値。日英両国において、年次推移とともに、人口全体でどの程度無償労働時間が足りなくなるのかを表している。また、グラフでは、無償労働の自動化により、将来における無償労働時間の不足がどの程度改善されるのかを示している。

無償労働の自動化による就業率への影響:F&Oスコアによる自動化のケースのみ

Frey and Osborne (F&O)(2017)の職業別自動化スコアを無償労働に適用したケースについて、無償労働から解放された時間がすべて有償労働に転じたと仮定した場合に予測される就業率。推計方法の詳細については、Hertog et al. (2023)を参照されたい。

参考文献

Hertog, E., S. Fukuda, R. Matsukura, N. Nagase, and V. Lehdonvirta (2023) The future of unpaid work: Estimating the effects of automation on time spent on housework and care work in Japan and the UK, Technological Forecasting and Social Change 191: Article 122443.

年少期、成人期、高齢期における無償労働時間の不足・余剰

「無償労働の時間純消費(人口計)の年次推移:自動化がない場合/自動化がある場合」から計算した値を年少期、成人期、高齢期で合計した値。日英両国において、年少期と高齢期における無償労働の不足及び成人期における無償労働時間の余剰がどの程度であり、それが年次によりどのように推移するのかを表している。また、グラフでは、無償労働の自動化により、将来における無償労働時間の不足や余剰がどの程度変化するのかを示している。

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