• LINE
  • Twitter

令和3年度新2年生開講式における学部長式辞

 新2年生の皆さん、昨年度は新型コロナウイルスの影響で開講式を開催することができず、気の毒な思いをさせてしまいました。それにもかかわらず、1年間よく辛抱してくれたと思っています。1年遅れではありますが、皆さんに改めて「日本大学経済学部生」としての自覚を持ち、新しい心で2年次のスタートを切ってもらいたいという思いで、今日、この場に集まっていただきました。
 
 私自身の長い教員生活の中でも、入学式や開講式を実施することができなかったというのは、初めての経験でした。この1年間、皆さんも様々な不安と闘ってこられたことと思います。しかし、この1年を振り返ってみると、決して全てがマイナスなことばかりではなかったと思います。今まで考えてもいなかったこと、あるいは見向きもしなかったようなことに目を向ける機会になったのではないでしょうか。
 
 私は40名の学生が所属するゼミナールを担当していますが、この1年間、こうした苦しい時期だからこそ、ゼミ生と手書きで文通をしました。私の書いた手紙は、1名あたり約十数通、あわせて約500通に上ります。1年間でこれだけの数の手紙を書いた経験は、今までありませんでした。この先もおそらくないと思います。そして40名のゼミ生から、同じだけの数の手紙が届くわけです。学生たちから届いた500通の手紙は、私の大切な財産となっています。このコロナ禍がなかったとしたら、こういう経験はできなかったと思います。教室の中ではなく手紙の中だから話せることもあるのです。そういう面では良いこともあったと思っています。皆さんはどうでしょうか。
 
 現在の状況は、新型コロナウイルスが完全に収束するまでは続くかもしれませんが、大学としては、可能な限りコミュニケーションがとれる機会をつくっていきたいと考えています。大学は友人や教職員と直接話をしながら知識や経験を得る場所であり、それが学生たちの成長に大きな役割を果たすものと考えています。皆さんが学内で日常の会話ができるということ、それも大学の大きな価値、役割の一つであると思うのです。皆さんには、忍耐したこの1年間をしっかりと心に留めて、コロナの後の社会に踏み出してもらいたい。
 
 また、こうした時機だからこそ、じっくり本を読む機会もあるかもしれません。長編や未知の分野の本でも良いでしょうが、本を読む機会や本に出会う機会を増やしてもらいたいと思います。私も学生時代、多くの本に出会えるよう努力をしました。ある小説家の自伝に「図書館にある4万冊の本を全て読んだ」とあったため、大学入学時には「それなら大学4年間で1万冊くらい読めるのではないか」と思い、目標を立てました。ところが、実際に計算してみると、これが到底達成することができない目標であることがわかりました。1日1冊読んだとしても、4年間では1500冊程度しか読めないのです。そこで私は「1万冊の本に出会う」という目標に改めました。図書館で書架から本を抜き出し、表紙、次に目次を見る。そして最初の1頁にざっと目を通して、書架に戻す。これでも本に出会うということにはなる。やらないよりは良い。そう考え、これを1万回繰り返しました。くだらないことかもしれませんが、こうしたくだらないことができるのも学生の間だけかもしれません。学業もしっかりやらなければなりませんが、友人との交流やスポーツなど、学業以外の物事や経験が皆さんを培っていきます。学生時代のあらゆることが、将来の皆さんの財産になります。これからの3年間、しっかりと自分を育んでいただきたいと思います。
 
改めて、本日はおめでとうございます。
そして、これからもよろしくお願いいたします。

令和3年4月1日
経済学部長 小梛 治宣